また、事故?

このごろ、航空事故がらみのニュースをよく耳にするような気がします。空の事故が多くなっているのでしょうか?

傾向を読み取る

日本で航空事故調査を行う組織は、国土交通省の運輸安全委員会(JTSB)です。そのホームページにある統計データを基に、独自にグラフを作成してみました。運輸安全委員会も月別と機種別のグラフを載せていますが、ほとんど傾向が分かりませんので…。

航空事故(ACCD)と航空重大インシデント(INCD)の違いについては別の機会に触れようと思いますので、ここでは読み飛ばしてください。運輸安全委員会のホームページには、「重大インシデントとは、事故が発生するおそれがあると認められる事態」とあります。

・データは運輸安全委員会ホームページ、航空事故の統計 および 航空重大インシデントの統計 から、縦軸が発生件数

事故だけでなく、重大インシデントの調査も行われるようになったのが2001年10月から(このとき「航空事故調査委員会」から「航空・鉄道事故調査委員会」に変わった)。そのため、2002年から約15年間の発生件数を見ることにします。

年によって、棒が出たり引っ込んだりバラついていますが、大局的には事故/重大インシデント共に減少傾向のように見えます。では、事故と重大インシデントを区別せず、両方の件数を合計してみるとどうでしょう。

あれ? ここ数年は増えているのかな? 今年2017年のデータは10月27日時点なので、あと2か月でもう少し積み上がってしまうかもしれないしね。航空事故のように発生頻度が非常に低いデータを分析するには、1年単位は適当ではないように思います。そこで、直近の過去5年間の平均値をグラフにしてみました。

おっ! はっきり見えてきましたね。事故と重大インシデントの合計発生件数は、2014年ごろを底にして微増傾向に転じたようです(3年平均でもほぼ同様の結果になります)。

傾向から考える

この統計データを見るとき、注意すべき点があります。それは、重大インシデントの取り扱いがこの間に少し変わっていることです。「発動機(エンジン)の破損」の判断の変更、「意図しない物件の落下」の追加などが行われており、それまで調査対象だったエンジン破損事案でも損傷状況によっては対象から外れ、また、調査対象ではなかった物件落下事案を新たに調査することになったのです。発生件数にどの程度影響したのかは個別事案を検討する必要がありますが、先に掲げたグラフではこれらの影響は無視しています。最近よく話題になる飛行中の落下物が、近年の航空重大インシデントの増加傾向を押し上げる要因の一つになったりして…。

ほかにも、これまで航空事故発生件数は全世界的に減少傾向だったが今後は増加に転ずるだろう、と予測する文献を以前に見たことがあります。その理由の一つとして、事故防止に有効な技術的に主要なものはすでに対策済みの感があり、残る大きな要素であるヒューマン・ファクター(人的要因)は現状以上の抜本的対策が容易でないこと。もう一つ、世界的に人や物の移動が増え続けるため、その輸送に航空便数が大幅に増えること、そんな内容だったように記憶しています。近年のLCCの台頭は、人の移動の増加傾向の表れと言えるかもしれません。便数が大きく増えれば、事故件数も増加することは避けられないのでしょう。

事故はこれ以外にも

軍用機の事故や重大インシデントについては、運輸安全委員会の調査対象になりません。つまり、上記のほかにも、米軍機や自衛隊機の事故が発生しているのです。日本国内で米軍機と言えば、オスプレイの墜落や不時着、大型ヘリコプターの炎上の話題などが注目されがちですが、ここでは触れないでおきます。

自衛隊機に限ってみれば、わずかこの半年間でこんな事案がありました。いずれも前掲のデータには含まれていません。これらの事故調査は自衛隊が独自に実施します(しました)。

  • 2017.10.18  F-4EJ改(空自)百里基地で地上走行中に炎上
  • 2017.10.17  SH-60J(空自)浜松沖の海に墜落(不明4)
  • 2017.08.26  SH-60J(海自)青森県沖の日本海に墜落(死者2, 不明1)
  • 2017.08.17  AH-1S(陸自)東富士演習場で落着
  • 2017.08.17  CH-101(海自)岩国基地で横転
  • 2017.06.09  C-2(空自)美保基地で滑走路逸脱
  • 2017.05.15  LR-2(陸自)函館空港へ進入中に墜落(死者4)

この状況では、自衛隊機の事故が続く、事故が多い、などと言われても仕方がないでしょうね。「機体の老朽化」や「隊員の疲弊」などを要因に掲げる記事も見かけますが、事故原因の本質とは少し違うような気がします。それぞれの原因をしっかり調査して再発防止に活かすことが重要であり、事故調査の第一の目的でもあります。

まとめ

運輸安全委員会のデータによれば、おおむね減少傾向を示してきた我が国の航空事故と航空重大インシデントの発生件数が、ここ数年は下げ止まり、微増に転じた可能性があります。重大インシデントの取り扱いの見直しなどにも注意しつつ、今後、便数が増えても事故発生件数を抑え込めるのか、このさき数年間の変化を引き続き見守っていきたいところです。

また、この半年ほどは、運輸安全委員会のデータには含まれない、自衛隊機の事故報道がずいぶん目立つような気がします。民間機、自衛隊機あるいは米軍機を問わず、不幸な事故を繰り返さないために、充実した事故調査の実施と調査結果の公表をお願いしたいですね。事故原因に関する情報は公開してこそ生かせるものですから。それが結果的に事故発生件数を減らすことにつながるものと思います。

※ 写真は埼玉県所沢市で見た彩雲、2013年6月23日撮影

※ ここで使用した略語(アルファベット順)

  • ACCD: Aircraft Accident(航空事故)
  • INCD: Aircraft Serious Incident(航空重大インシデント)
  • JTSB: Japan Transport Safety Board(運輸安全委員会)
  • LCC: Low-Cost Carrier(格安航空会社)

コメント

  1. イカゴロ より:

    今、三笠の手前の岩見沢です。トイレの便座に腰掛けながら、やぶ悟空さんの投稿記事を見ています。あしからず。
    久しぶりに鋭い記事を拝見いたしました。事故系は、お得意の分野ですネ。流石です。これからもビシビシ書いてください。
    メルマガが届いたので26日事故調公表の三保場外のオーバーラン事故を続けて見ています。小型機のうっかり事故も最近は多過ぎますね。困ったものです。
    では、これから旭川に向かいます。

    • やぶ悟空 やぶ悟空 より:

      不幸にして発生してしまった事故から自分に置き換えて学び、再発防止に役立てるために、事故調査報告書の熟読はとても大事なことと思います。
      地上の事故も、お気を付けて。