はじめてのR22操縦(その1)

Day-1

数年前、ロビンソンR22ヘリコプターを操縦する機会がありました。飛行時間15時間ほどの操縦訓練を思い出しながら、当時のGPS記録を基にして何回かに分けて書いてみることにします。

R22は、米国Robinson Helicopter Company製の2人乗り小型ヘリコプターで、ラジコン模型やシミュレーターではなく、まぎれもない実機(私が操縦したのはR22ベータⅡ型)です。回転翼航空機(ヘリコプター)の操縦方法については、必要に応じてその都度説明を加えることにします。

初回は、いきなりですが直線飛行から入りましょう。

直線飛行

同じ高度を同じ速度でまっすぐ目標に向かって飛ぶ、水平直線飛行です。セスナ172の操縦訓練でも最初の科目はコレでした。いちばん基本となる飛行ですね。ほとんどの科目は水平直線飛行の状態から始めて、水平直線飛行の状態に戻ることになりますから…。

R22操縦の説明のため、三舵(右手、左手、両足)の操作について話しておきます。

  • コレクティブ・ピッチ・レバー(左手レバー)

ヘリコプターをある高度まで浮かせるには、単純に言ってしまえば、左手のレバーを引き上げます。このレバーは自動車のサイドブレーキのような棒状のもので、コレクティブ・ピッチ・レバー(単に「コレクティブ」)といいます。あまり使い慣れない言葉なので、私は勝手に「左手レバー」と言ってます。

左手レバーを上に引くと、メインローターの2枚のブレードのピッチ角が同時に大きくなるので、揚力が大きくなって浮き上がるのです。

  • サイクリック・スティック(右手スティック)

ヘリコプターが浮いている状態で前進させるには、同じく単純に言えば、右手のスティックを前方に押します。このスティックは、R22の場合は特殊な形状をしていますが、一般的な操縦桿のような棒状のものと考え、サイクリック・スティック(単に「サイクリック」)といいます。これも慣れない言葉なので、私は勝手に「右手スティック」と言ってます。

右手スティックは、前進だけでなく、前後左右どちらの方向に移動するときにも使います。メインローターの回転面が傾いた方向に進むのです。このスティック操作とメインローター・ブレードの動きは少し面倒なのでここでは省略します。

  • ペダル

ヘリコプターが浮いている状態で、機首を右に向けるには右ペダルを、左に向けるには左のペダルを踏みます。すると、テールローター・ブレードのピッチ角が変化して、ホバリング中なら同じ場所で機首の向きだけが変わります。前進飛行中なら右手スティックの左右操作とペダルの操作を連携させて、左右の旋回を行います。

右足と左足、別々のペダルに足を載せ、右ペダルを踏み込めば左ペダルが手前に上がり、左を踏めば右が上がるので、両足を使いますが操作としては1つです。

これらの三舵のほかに、スロットル操作があります。でも、エンジン回転のコントロールはガバナーにお任せするので、基本的に手動操作なしで飛行できます。とはいえ、エンジン回転数とローター回転数は常にチェックしなければなりません。メインローター回転数の維持は、回転翼航空機の揚力に関わる最も大事なことですから…。

上空へ

はじめてヘリコプターに搭乗した訓練生は、当然のことながらホバリングがまったくできません。ホバリングがそこそこできないと、離陸も着陸も不可能なので、まずは教官の操縦で上空へ…。

左手レバー、右手スティック、両足のペダル、これらの三舵を操作して水平直線飛行を行います。教官が操作していた位置を変えないようにコントロールを持ちます。”I have control.”

この時点で高度計1,500フィートと速度計60ノットを確認しました。これを変えないように直進しますが、基本は計器に頼らず外を見るよう指示されます。そこで感じたのは、セスナ172と比べてR22は前方視界が圧倒的に広いので姿勢の細かな変化が分かりにくい、ということです。固定翼機なら、計器パネル上部と地平線の見え方で姿勢変化が分かりますからね。

(↑)GPS記録による高度変化 <カシミール3D>

(↑)GPS記録から計算された速度変化 <カシミール3D>

操縦開始

とりあえずは左手レバーとラダーペダルは動かさず、右手スティックだけで左右の水平(スティックの左右操作)を維持しつつ高度が大きく変化しないように機体のピッチ姿勢(スティックの前後操作)を調整します。この右手スティックは反応が非常に敏感です。固定翼機のような大きな操作なんてとんでもない! 非常に大きな挙動変化が起こって危険です。

高度が少し下がってきたようです。右手スティックの修正操作だけで高度を回復しようとすると、速度が低下してしまいます。高度を上げるには、左手レバーを少し持ち上げればいいですね。このときメインローター・ブレードのピッチ角が大きくなるので、メインローター(上から見て反時計回り)を回転させるエンジントルクが少し大きくなり、その反トルクで機首が少し右を向こうとします。これを抑えるために、左のペダルを少し踏み込む必要があります。左手レバーを下げるときは逆の操作になります。

この左手(コレクティブ)レバーと左右ペダルの同時操作は、いちいち理屈を考えなくとも体が自然に動くように…と教わりました。これらの操作の大きさとタイミングが上手く調和しないと、機首が左右に振れてしまいます。

道に沿って

直線道路の上で教官から操縦を渡されました。この道に沿って飛ぶには、右手スティックで水平を維持しつつ高度を変えないようにし、ペダルも少し使って道路の真上を維持します。目標を維持する目安がまだはっきりしないながら、少しだけずれているような気がしていました。着陸後のデブリーフィングで、弱い横風に自然に対応していたと言われ、そうだったのかと気が付く始末でした。

(↑)GPS記録による飛行航跡 <カシミール3D>

PCのMSフライトシミュレーターで、自己流ながら、かなりの時間R22を飛ばす訓練を重ねていたので、修正操作をどのようにするのかについては分かっていたつもりでしたが、実際に飛んでみないと「加減」が分からないものです。右手(サイクリック)スティックは想像以上に敏感であること、左手(コレクティブ)レバー操作によるトルクの変化が感じられること、そして両足のペダルだけが他の舵に比べて大きめに操作できることが分かりました。

R22フライト初日の科目はまだまだ盛りだくさんですが、まずはここまで。(つづく