はじめてのR22操縦(その16)

Day-11

訓練11日目は、平均風速3ノット、最大瞬間7ノットの弱い北風です。

ヘリコプターの世界で有名な教官に初めて同乗していただくことになりました。ここまで約12時間の訓練成果を見てもらおうと、気持ちの上で上手くやろうという色気が出てしまったようです。結果的に、今日の飛行はいいところがありませんでした。風も弱いのに…。

ローター回転が反時計回りのヘリコプターは、浮揚するとき右スキッドが浮いてから左スキッドが地面を離れます。何故そうなるのかは、(その4)をご覧ください。理屈ではそうなんですが、そう大きく傾くわけではないので、きちっと垂直に離陸させることができないと、はっきり感じることはできません。この日はその特性に加えて、教官が大柄な(つまり重い)ので左右重心が左に寄り、左右スキッドが地面から離れる差を、はっきりと感じることができました。

離陸直後の上昇中、さっそく指摘がありました。

  • 速度を追いかけず、外の見え方(風防と水平線の位置関係)で機体を安定させること

確かに、上昇中はいつも最良上昇率速度(Vy)の53ノットを維持するため、速度計への注意配分が大き過ぎた気がします。姿勢の変化で速度計の指示がかなり変化することは、特に進入中に経験していましたので、的確なご指摘に納得しました。基準線を合わせて上昇すると当然姿勢は安定し、速度もほとんど変わりません。

TGL

北からの風に向かって離陸し、左の場周経路に入ります。全て左旋回で飛行することになりますが、どちらかというと私は左旋回が苦手です。離陸上昇中のアップウィンドからクロスウィンドへのターンは、通常は高度がまだ1,500フィートに達していないため、左上昇旋回になります。ローターが左回転のR22は、左旋回時に機首上げ傾向がはっきりと現れるので機首を抑えつつ旋回しなければなりませんが、抑えすぎて上昇率が鈍らないような加減が必要です。これがうまくいかず機首が上がってしまって速度が低下する状況になり、1週目から指摘されました。右手(サイクリック)スティック操作の動かし方が早いと機首上げのジャイロ効果が大きく出やすいので、じわ~っと左へ倒す感じにすると良い、ということです。

4周目はダウンウィンドへの旋回タイミングが少し早すぎたようで、内側に入り込んでいます。

ホバリング

次はホバリングの訓練です。今日の指導は次のようでした。

  • ホバリングからの接地は、遠方に目標をとって機首を安定させ、左右の振れを止めたらそのままスーッと連続的に下ろしてしまうこと。途中で止めるとどんな人でも振れてしまう。ただし横に振れているときはやり直すこと。下りた後は右手(サイクリック)スティックを引かず、どちらかというと押す。前後に安定しないときは前に滑らせるぐらいが安全

「スーッと連続的に下ろしてしまう」と言われたのは初めてです。これなら比較的やりやすいです。これまでは、いつ地面に着いたか分からないぐらいスムーズな着地が良いと思っていたので、ゴツンというショックが気になって直前に止めたくなります。自動車のブレーキ操作に例えれば、減速して車が止まる直前にほんのわずかブレーキを緩めるとカックンとならず滑らかに停止できる、あの感覚で着地のショックを和らげることができそうだと思っていましたが、R22でそれを会得するにはまだ時間がかかりそうです。エアバス機のマニュアルでもスムーズな着地は避けるように記載されています。しっかりと着地すること(firm landing)が大事なのでしょう。

教官から「ホバリングはできている」とのお言葉をいただき、こんなんでいいんだろうかと思いつつも、感激です。

異常姿勢からの回復

その後、スポットで異常姿勢からの回復を行いました。いつものホバリング高度より少し高いところで、教官が意図的に機体の姿勢を崩した状態で操縦を渡されます。その姿勢を立て直してホバリングで静止するというものです。

セスナ172の訓練では、フードを付けたBIF(基本計器飛行:Basic Instrument Flying)でこれを行いました。外が見えない状態で、計器だけを見て、教官が乱した機体姿勢を立て直すというものです。

この日は、フードを付けず外界の景色で姿勢を把握できますので、比較的容易に回復操作を行って機体をすぐに止めることができました。大事なのは、あて舵の大きさとタイミングでしょうか。ただ、左手(コレクティブ)レバーを引き上げ過ぎてMAP(吸気圧力:Manifold Pressure)が高くなったことがあったようです。そこまで気がまわりませんでした。

訓練当初、ホバリングができずに自ら姿勢を大きく乱していたことを思い出し、操縦の進歩を感じた瞬間でした。

オートローテーション(直進、180°)

次に、左側トラッフィックパターンを回って直進オートローテーションを行います。フレア開始点が、いつもよりやや遅いように感じました。

2週目の直進オートロは、高度が高かった場合を想定し、ファイナルでいったん右に振ってS字で着地点の調整を試みました。旋回するとローター回転数が上がるため、速度計60ノットと回転計を細かくチェックし、修正する必要があります。

3回目は180°オートロです。ダウンウィンドの幅を狭くして、スポットのアビーム位置からエンターします。落ち着いてやれば、いつもの訓練成果が現れてそこそこのできです。

GOV OFF着陸

是非とも体験しておきたかった、ガバナーを切った状態での操縦です。R22の操縦はほとんど手動操作ですが、ヘリコプターで非常に重要なローター回転数の制御だけは、ガバナーによるエンジン制御と左手レバーのスロットル・リンク機構で自動化されています。ですから通常の飛行では、エンジン回転数やローター回転数を神経質に気にしなくても、グリーンバンドを逸脱することなく飛行できます。ただ、急激な左手レバー操作などを行うとガバナーが追従しきれず、不測の状態に陥る可能性があります。

ダウンウィンドでガバナーを切りました。水平直線飛行のローター回転数は、何もしなくても細いグリーンバンド内に入っています。スロットルをいじる必要はありません。左手レバーを下げた進入中でも同じです。ただ、左手レバーの急激な操作はしないように、との指示です。ファイナルでほんの少しエンジン回転数が低下気味だったためスロットルをわずかに開きました。その後はホバリングに移行するまで、ガバナー・オフにもかかわらず、通常どおりの操作で済みました。

これは意外でした。ガバナー・オフで、なぜこんなに何もしなくていいんだろうかと。左手レバーのスロットル・リンク機構、すなわち、左手レバーを引き上げるとスロットルが開かれ、下げると閉じられるしくみが、非常に上手く機能しているということになります。そのため、手動で左手グリップを回すというスロットル操作をほとんど必要としないようです。

計器表示の不具合

トラッフィックパターンを飛行中、オルタネーター(発電機)の不具合を示す「ALT」ランプが点灯しました。数秒で自然に消えましたが、本当に発電機が故障したとしてもR22の場合は30分ぐらいは飛行可能なので、慌てなくて良いということです。

これをきっかけに、各種の警報や注意ランプが点灯したり、計器表示がおかしい場合の確認方法や対処について説明して下さいましたが、構造を良く理解していなければ何故そうすればよいのか分からず、まして操縦中はトラッフィックパターンをきちんと飛行することに「脳」作業の大部分を使っていますので、教官の丁寧な説明も筒抜けの状態です。

ただ、R22は仕組みがシンプルなので、本当の故障なのか表示の問題なのかをいろいろな方法である程度識別できること、R22のエンジンが止まることはほとんどないことは分かりました。また、最悪の状況が起きたときは、オートローテーションで下りられる場所に着陸するしかないと。人が空を飛ぶ以上、ある程度のリスクは覚悟しておかなければなりません。

(↑)オートローテーション降下中に右へ振り、着地点を調整

11日目はこれで終了です。飛行時間がまもなく15時間になりそうなので、次回で私のR22訓練はひとまず終わりになります。では、最終回に続く…。

※ 冒頭の写真は、苫小牧市科学センターに展示されている富士ベル204B-2ヘリコプター、テールローターに注意!、2018年1月7日、やぶ悟空撮影