はじめてのR22操縦(その17)

Day-12

12日目は、西の風が平均で13ノット、最大瞬間風速27ノットもある、風の強い日です。

計画した飛行時間まであと1時間27分なので、訓練は今日が最終日です。期間中でいちばん風が強く、風向き変化の大きな日となってしまいました。もうソロ(単独飛行)に出て大丈夫と何度か言われていますが、この風で事故は起こしたくないので教官に同乗していただきました。

エプロンから浮揚したものの、ホバリングが安定しません。前回まではもっと上手くできていたので、これは強風のせいに違いない。ラインに沿ってホバー・タクシーしますが、ふらついてしまいます。離陸方向の選択に迷うほど吹き流しが動きますが、何とか北向きに離陸しました。

TGL

横風での離陸は上昇中不安定になりがちですが、初めから風に応じたクラブをとっておくと少し安定しやすくなります。

いつものように左側トラッフィックパターンを2周しました。スポットに着陸してもホバリングが全く安定しません。左からの横風でのホバリングは機首方位が不安定になりやすく、非常に難しいのです。これは、風でテールローター推力が弱められることが原因です。右からの横風になるように機首の向きを変えてみると、明らかに安定させやすく感じました。安定させるには、比較的大きめで早いペダル操作が必要なようです。

ホバリングでしばらく粘っていると、一瞬、風が安定することがあるので、それをのがさず着地させます。我慢しきれずに無理に接地させるのは危険です。

風向きの変化が激しいので西向きの進入に切り換え、西に向かって離陸しました。フライトサービスから、風は270°~360°VARIABLEで10ノット以上、たまに20ノットという通報があります。目標の旋回ポイントを教えてもらいながら、5角形のパターンで飛行します。

着陸スポットから100メートルほど手前の道路に電線が走っているため、ややスティープ気味に進入して電線を越える必要があります。100メートルも離れていれば計算上では何も問題ないのですが、実際に進入してみると電線ってかなり気になるものです。

場外着陸

場外へ着陸する訓練をしてみようと促され、南に向かいました。

いつもヘリポート周辺を回っているだけでした。やっと、つながれていた糸が外れたような、ちょっとした小旅行気分で初めての空を飛びます。とは言っても、あっという間でしたが…。

数マイル(海里)南の河川敷に、広く平坦な草地があり、そこを目指して右側トラッフィックパターンを作ります。集落を避けるようにルートを選び、堤防の工事車両を避けて西向きに進入します。着陸地点が広い草地のため目標が定めにくい感じはありましたが、しっかりとホバリングしました(着地はしませんでした)。

離陸方向には背の高い木々があったので、その間を抜ける影響の少ないコースを見定め、十分に高度を獲得してから右旋回でへリポートに戻りました。

これで、どこにでも着陸できるヘリコプターパイロットになったような気分になり、とても気持ちのいい体験でした。

オートローテーション

西風に合わせ、オートローテーション訓練を行いました。オートロはこれだっ、という感覚がなかなかつかめずに、何となくもやもやした感覚がまだあります。フルタッチまで自分一人でやっていない(まだそのレベルにはなっていない)ので、肝心のフレアから着地までのフェーズも「たぶんできる」とは思っていますが…、この「たぶん」が、もやもやの原因なんでしょう。

実際にオートロで着地せざるを得ない状況になった場合、いくらパワーリカバリーのオートロ訓練をしていても、毎日のように飛行経験を重ねている仕事のパイロットとは状況が大きく異なるプライベート・パイロットが、果たしてどれぐらい成功させられるのかと疑問に思うことがあります。フルタッチの訓練は、当然、機体を壊すリスクが大きくなるので、個人機オーナーとしては二の足を踏むこともあるでしょうし…。

しかし、現実のオートローテーションでは、機体が少々壊れても大きな怪我をしなければ、あるいは命さえ助かれば、それでいいとも考えられます。その意味ではパワーリカバリー訓練を重ね、素早い判断と操作が求められる最初のエンターフェーズ(ローター回転を落とさないこと)をしっかり身につけておくことは、とても重要なことだと思います。

再度、TGL

最後に、五角形の左側トラッフィックパターンを1周し(緑の航跡)、すべての飛行訓練が終了しました。

デブリーフィングでのコメント、風が強いときには、

  • ボール(すべり計)に注意する
  • クラブをきっちりとると安定する
  • うまく風をつかむ

というものでしたが、計15時間の飛行訓練中に「風をつかむ」という意味を十分理解するまでには至りませんでした。

訓練を終えて

回転翼機R22を操縦して一層強く感じたのは、やはり「飛んでみなければ分からない」ということに尽きます。いくら理論を学んでも、操縦経験者に尋ねても、決して分からない「感覚」がありますからね。操縦は経験を重ねるほど上手くなるのでしょうが、一方、慣れるにつれ自然に反応するようになって、ある意味「感覚が鈍く」なる部分もあるのでは? たった12日間の訓練は、経験豊富な操縦者がほとんど意識しなくて済むようになった基本の部分をR22で体感することができたんじゃないかと思っています。

※ 冒頭の写真は、苫小牧市科学センターに展示されている富士ベル204B-2ヘリコプターの航法計器RMI(Radio Magnetic Indicator)、2017年1月6日、やぶ悟空撮影

ロビンソンR22ヘリコプターの操縦訓練について、17回にわたって書いてきました。この訓練中、右腕に着けていた「GARMIN foretrex 101」という古いGPS端末の記録を、「カシミール3D」フリーソフトを使用して、飛行航跡図や高度・速度変化のグラフに、あるいは3D画像に可視化するなどし、多用しました。

使用した専門用語や略語などに、必ずしも丁寧な説明を加えなかったので、分かりにくく感じたことと思います。航空機の操縦って、たぶん特殊な世界なのに、その中でもヘリコプターの操縦に絞った、超マニアックな内容なので、万人に興味を持ってもらうことは初めから期待していませんでした。いわば備忘録のような、日記のような…、つまり自己満足でした。こんな記事にお付き合いいただいた方には深く感謝いたします。