苫小牧と情報収集衛星(その1)

2018年2月27日、種子島宇宙センターから情報収集衛星(IGS)が打ち上げられました(産経ニュース、2018.2.27 14:00 より)。内閣衛星情報センター(CSICE)によれば、これは「情報収集衛星 光学6号機」なのだそうです。情報収集衛星は以前から「事実上の偵察衛星」とか「スパイ衛星」などとも報道されており、実際そのようなものかと思いますが、機能的には「地球観測衛星」の一種と考えていいでしょう。

苫小牧市には、この情報収集衛星システムの一翼を担う「北受信管制局」という地球局があるので、この衛星システムについて考えてみます。

何回かに分けることにし、まず初回は衛星本体について。

人工衛星

これまで情報収集衛星として打ち上げられた衛星は、先月打ち上げられた光学6号機を含めて計16機あります。2003年のH-IIAロケット打ち上げ失敗で失われた2機や、すでに寿命や不具合で運用終了している衛星(7機)もありますが、いずれも基本的には

  • レーダ衛星(「レーダ」=「レーダー」=「radar」)
  • 光学衛星

の2種類に分類できます。

)レーダ衛星の一種、陸域観測技術衛星2号(ALOS-2)の概念図。ALOS-2/PALSAR-2の開発状況」平成23年11月17日、JAXAより

)光学衛星の一種、先進光学衛星(ALOS-3)、JAXAのwebサイトより
※ 一例として揚げたこれらの衛星(ALOS-2およびALOS-3)は、共に三菱電機製です。

「レーダ衛星」というのは、衛星から地球に向けて電波を発射し、その反射波を受けて画像にするものなので、夜間でも雲があっても撮影(撮像)できます。一方、「光学衛星」はデジカメで撮る写真のようなもので、レーダ衛星より高解像度、つまり細かいところまで撮影できます。でもストロボ発光のようなことはできないので昼間だけの撮影、それも雲があると地上目標が見えません。そのため、これらの衛星の特徴を補完するように2機ずつ組み合わせ、計4機での運用を基本にしているのでしょう。いずれにしても、宇宙から地球上のモノを見るための人工衛星です。

2012(H24)年2月1日に衆議院に提出された「情報収集衛星の契約における三菱電機の過大請求に関する質問主意書」に対する答弁第28号(同2月10日)によれば、2009(H21)年に打ち上げられた光学3号機以降の情報収集衛星の製造者は、すべて「三菱電機」と回答されています(調べていませんが、それ以前の衛星も同社製なのかもしれません)。そんなことから、ALOS-2や-3の進化系が情報収集衛星として用いられているだろうと想像できます。

では、いま運用中の衛星は何機あるのでしょう?

レーダ衛星は、

  • レーダ3号機(2011(H23).12 打上げ)
  • レーダ4号機(2013(H25).01 打上げ)
  • レーダ予備機(2015(H27).02 打上げ)
  • レーダ5号機(2017(H29).03 打上げ)

の4機、そして光学衛星は、

  • 光学4号機(2011(H23).09 打上げ)
  • 光学5号機(2015(H27).03 打上げ)

の2機、計6機ということです。<2018(H30)年3月現在>

そして、先月打ち上げられたばかりの光学6号機は、まだ運用開始準備中でしょうが、設計寿命の5年を超えて運用している光学4号機の後継機となるそうです。レーダ3号機と4号機もすでに5年以上運用しているので、今後も新しい衛星が継続して軌道上に運ばれることでしょう。

「情報収集衛星の概念図」産経ニュース(2015.2.1 10:56)より

今後の計画

内閣官房の平成30年度予算案によると、次の打ち上げはレーダ6号機が平成30年度内に、光学7号機とデータ中継衛星が平成31年度に予定されています。整備目標は「合計10機の衛星(基幹衛星4機、時間軸多様化衛星4機、データ中継衛星2機)」とされています。珍しい名前が出てきたけど、コレって何だ?

「基幹衛星」とは:

これまでの4機体制(レーダ衛星2機、光学衛星2機)に相当する一式のことです。内閣官房の要求資料では「関心対象の発見、識別及び詳細監視のため」とされています。「関心対象」って、やはり北朝鮮が主なんでしょうね。

「時間軸多様化衛星」とは:

同じ資料で「関心対象の動態的な監視のため」とされ、新たな軌道に投入される4機体制(レーダ衛星2機、光学衛星2機)のことを示すようです。それにしても「時間軸多様化」とは、ちょっと恥ずかしいような、たいそうな名前を付けたもンですね。

「データ中継衛星」とは:

名前のとおりデータを中継する衛星(2機)です。レーダ衛星や光学衛星が撮影した画像データを地上に送るとき、日本の地球局から見える範囲にいなくても、この衛星が中継してデータをダウンリンク(衛星→地球局)できるようにするものです。この衛星については次回以降に少しだけ説明する予定です。

※ 最初の写真は、苫小牧市にある北受信管制局の地球局アンテナドームと新千歳空港に最終進入するボーイング777機、平成30年3月10日、やぶ悟空撮影

次回は、地球局と衛星の軌道について。おたのしみに。

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略語

  • ALOS : Advanced Land Observing Satellite(陸域観測技術衛星)
  • CSICE : Cabinet Satellite Intelligence Center(内閣衛星情報センター、CenterをCEとしたようです。CSICというスペインの基礎研究機関などと混同されるのを防ぐためかな?)
  • IGS : Information Gathering Satellite(情報収集衛星)
  • JAXA : Japan Aerospace eXploration Agency(宇宙航空研究開発機構)
  • PALSAR : Phased Array type L-band Synthetic Aperture Radar(フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ)

)陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)の畳まれたレーダアンテナ(打ち上げ前)、JAXAのwebサイトより