千歳の滑走路

新千歳空港(RJCC – New Chitose)には2本の滑走路があり、隣接する千歳飛行場(RJCJ – Chitose)にも2本の滑走路があります。この2つの飛行場は、民間用の空港(新千歳空港)と自衛隊との共用空港(千歳飛行場)という違いはありますが、敷地はつながっていて航空機が行き来できるので、一体として見ると4本の滑走路を持つ大きな飛行場のようにも見えます。今回は、それらの滑走路に注目します。

滑走路番号の基本おさらい

滑走路は、滑走路番号で区別します。1本の滑走路でも風向きによって使う向きが異なるので、それを区別できるようにしておかなければなりません。滑走路番号は、進入方向から見たときの滑走路の磁方位(磁北から右まわりに測った方位、度)を10分の1にして、小数点以下を四捨五入した2桁の整数で表します。ただし「00」は使わず「36」としますので、「01」から「36」までの36通りのいずれかで表現されます。滑走路番号を滑走路上に表示したマーキングを「指示標識」といいます。

eAIP(電子航空路誌)を見ると、例えば旭川空港(RJEC)の場合、滑走路の真方位(True Bearing)が154.17°/334.17°と記載されています。滑走路の反対向きは当然180°異なり、通常「/」で区切ります。これを磁方位に変換するには地磁気偏差(Magnetic Variation)の値を加減します。旭川空港では9°W(Wは西)なので、滑走路磁方位は163°/343°となります。10で割って四捨五入した「16/34」が滑走路番号(若い数字を先に記述)です。磁方位の1桁を切り捨てたことになります。

もう一例、函館空港(RJCH)の場合は、滑走路真方位は107.98°/287.98°(eAIP)です。磁方位では117°/297°(MAG VAR 9°W, eAIP)となり、「12/30」が滑走路番号です。この場合は切り上げた値です。


このルールの根拠は、航空法施行規則にあります。別表第五の備考には次のように記述されています。

「二 指示標識の数字は、進入方向から見た滑走路の方位を磁北から右まわりに測つたものの十分の一(小数点以下第一位を四捨五入する。)の整数とする。一桁となる場合は最初に〇をつける。」


このように、日本では数字が1桁のときは頭に「0」を付けますが、米国では「0」を付けてはいけないことになっているようです。


「A single-digit runway landing designation number is never preceded by a zero.」(AC 150/5340-1L “Standards for Airport Markings”, 9/27/2013, FAA)


)ワシントンD.C.のダレス国際空港。3本の平行滑走路のうち、中央の「1C」末端付近。(Googleマップ)

0」の表示はないですね。真方位は001°/181°とのこと、ほぼ南北の滑走路です。

)新千歳空港の「01R」末端付近。(Googleマップ)

滑走路番号はダレスと同じ「1」ですが、頭に「0」が付けられています。真方位は352.62°と172.62°です。

滑走路が平行に2本ある場合は滑走路番号が同じになってしまうので、L(Left、左)とR(Right、右)の文字を付けて区別します。例えば、東京国際空港(RJTT、羽田空港)では、滑走路 16L/34と 16R/34が平行です。平行滑走路が3本になると、先に示したダレス国際空港のように真ん中の滑走路にC(Center、中央)を付けますが、日本に「C」を付けた滑走路はありません。

じゃあ、平行滑走路4本ならどうする?

千歳の4本は平行か?

新千歳空港(RJCC – New Chitose)の滑走路は次の2本です。

  • 01L/19R、長さ3,000メートル×幅60メートル(A滑走路)
  • 01R/19L、長さ3,000メートル×幅60メートル(B滑走路)

eAIPによれば、これらの滑走路真方位はどちらも352.62°/172.62°となっており、平行滑走路です。

では、千歳飛行場(RJCJ – Chitose)の滑走路2本はどうでしょう。

  • 18L/36R、長さ3,000メートル×幅60メートル(東滑走路)
  • 18R/36L、長さ2,700メートル×幅45メートル(西滑走路)

これらの滑走路真方位は、eAIPでは「To be issued later」(後日発行)とされ、方位が明記されていません。でも、地図上では滑走路4本とも平行のように見えます。ならば、国土地理院の測量計算サイト「距離と方位角の計算」を使って確認してみることにします。

座標値の入力を「地図上で確認」するとし、滑走路両端付近の滑走路幅の中央をマウスで選択して「計算実行」します。できるだけ精度を上げるため、地図を最大まで拡大し、繰り返し計算させました。そこで得られた滑走路の方位は次のとおりです(小数点以下第2位を四捨五入)。

新千歳空港

  • 01L/19R01R/19L 共に、真方位:172.6°/352.6°

千歳飛行場

  • 18L/36R18R/36L 共に、真方位:172.6°/352.6°

結果はこのようにeAIPに記載された新千歳空港の真方位(172.62°/352.62°)とほぼ同じになり、やはり滑走路4本とも平行と考えていいのでしょう。先に運用していた千歳飛行場の2本の滑走路があり、後から新千歳空港の滑走路2本を新設したンですから、当然4本とも平行になるように造るでしょうね。

異なる数字に

真方位:172.6°/352.6°を磁方位に変換(9°W, eAIP)すると182°/362°(002°)となり、ここから滑走路番号は18/36となりますね。千歳飛行場の滑走路はそのとおり「18L/36R」と「18R/36L」ですが、新千歳空港の滑走路はなぜ「01L/19R」と「01R/19L」なのでしょう?

滑走路番号が同じ数字になるときは、磁方位に最も近い数値(四捨五入)ではなく、その次に近い数値(切り上げ、切り捨て)にするようです。


先ほど掲げた、航空法施行規則の別表第五の備考にこんな記述があります。

「三 前号の規定にかかわらず、前号の方法によつて求めた指示標識の数字が、近接する空港等の滑走路の指示標識の数字と等しくなる場合には、指示標識の数字は、前号の方法によつて求めた指示標識の数字に一を加えた整数又は一を減じた整数とする。」


千歳飛行場と新千歳空港の関係に当てはまる条文ですね。新千歳空港の滑走路2本は、先に運用していた千歳飛行場の滑走路2本と明確に区別できるように、「18/36」に1を加えて「19/01」(若い数字を前に出すと「01/19」)にしたンですね。1を引いて「17/35」とせずに足したのは、滑走路磁方位182°/362°(002°)に最も近い整数「18/36」の次に近い整数が「19/01」だからです。このようにしても、滑走路番号と磁方位との差は10°以内に収まりますから運航上もほぼ差し支えないのでしょう。


)千歳の滑走路方位イメージ


航空法施行規則の別表第五の備考には、他にこんな記述もあります。

「四 平行滑走路における指示標識は、次の例による。」

「五 前号の指示標識の文字は、平行滑走路の進入方向に向つて左側から順次に次のとおりとすること。
二本の平行滑走路の場合LR
三本の平行滑走路の場合LCR
四本の平行滑走路の場合L LC RC R
五本の平行滑走路の場合L LC C RC R」


この方式だと「18/36」のままでも4本の滑走路を区別できますね。でも、千歳飛行場と新千歳空港は隣接していますが別々の飛行場であり、それぞれが2本の平行滑走路を持っているので、「L」、「LC」、「RC」、「R」とはしなかったのでしょう。こうしてしまうと、「LC」(Left Center)と「RC」(Right Center)がターミナルビルを挟んで両側に分かれてしまい、操縦士に無用な混乱を与えてしまいそうです。

滑走路誤進入

ついでに、滑走路を間違えてしまうハナシを…。千歳の平行滑走路4本のうち、千歳飛行場の滑走路18L/36Rだけがコンクリート舗装で、その他の3本はアスファルト舗装になっています。千歳飛行場は空自の戦闘機や輸送機が使用するため、耐熱性や強度などの理由でコンクリートにしているものと思います。コンクリート滑走路は、アスファルト滑走路に比べて上空から白く見え、目立ちます。そのため、北側から新千歳空港の滑走路19Lに着陸しようとする航空機がファイナルターンで左旋回しているときに真っ先に目に入るようです。

千歳飛行場の滑走路18Lは、新千歳空港の2本の滑走路と同じサイズ(3000×60)で、ファイナルからの距離がより近く、そして白く見えるので悪天候下でも発見しやすいことから、誤ってそちらに向かって進入してしまうことがあるそうです。

同じように、共用空港で2本の平行滑走路がある百里飛行場03R/21L(茨城空港03L/21R)でも、百里のコンクリート滑走路に誤進入した事例があります(2014年9月20日発生)。お気を付けください。

おわりに

千歳飛行場(RJCJ – Chitose)は航空自衛隊の飛行場というイメージが強いのですが、現在でも共用空港に変わりはないので、民間機が千歳飛行場の滑走路を使って離着陸することもできます。

新千歳空港(01L/19R, 01R/19L)と千歳飛行場(18L/36R, 18R/36L)で滑走路番号が異なっていますが、滑走路方位は4本とも同じです。これは、当然ですが規則に従った名付けであることが分かりました。AIPに掲載されている千歳飛行場の滑走路真方位は、いつまでも「To be issued later」とせず、きちんと明記してほしいものです。

  • AIP:Aeronautical Information Publication、航空路誌
  • eAIP:Electronic AIP、電子航空路誌

※ 最初の写真は新千歳空港からの離陸(両機ともスカイマーク)、2018年5月、やぶ悟空撮影