苫小牧と情報収集衛星 ~新アンテナ登場~

情報収集衛星の北受信管制局(苫小牧)に、いつのまにか新しいアンテナができていました。どんな用途なのか推測してみます。そういえば数か月前から工事してたね。

静止衛星

道路上から見たところ、白く大きなパラボラ反射鏡を持つカセグレン・アンテナです。この形状とサイズ、指向方向などから、静止衛星との通信用ではないかと思います。

)カセグレンの副反射鏡が見える。これぐらい大きいとドーム状の覆いは設けないので、白く細いトゲ2本の避雷針がある。通常運用位置(写真のアンテナ向き)では主反射鏡の縁のトゲが、強風回避で真上を向けるときはアンテナ指向方向のトゲが有効だ。

静止衛星の軌道高度(赤道上空の高さ)は 約35,800 kmです。距離が遠いので電波の減衰が大きく、大口径の地上アンテナが必須になります。また、静止軌道で使用できる周波数帯は国際的に限られており、受信感度の限界などから、自ずとパラボラ反射鏡の直径(≒利得)が大体決まってしまいます。新たにできたアンテナのサイズは、静止衛星との通信用としてピッタリと言えるでしょう。そして情報収集衛星に関して思いつく静止衛星といえば…ハハ~ン、あれか!

データ中継衛星

情報収集衛星システムでは「データ中継衛星」の打ち上げが平成31年度に計画されており、現在その衛星を開発中です。すでに「苫小牧と情報収集衛星(その2)」で述べたように、データ中継衛星は静止軌道に投入されると考えられることから、この大きなアンテナはデータ中継衛星との通信用と思われます。

地球上からの高度が数百キロメートルという低軌道を周回する情報収集衛星は、日本国内にある地球局(中央センター、副センター、北受信管制局、南受信管制局)と直接通信できる時間や回数が限られます。静止軌道にデータ中継衛星を投入するとそれが大幅に緩和される(通信可能時間が長くなる)ので、人工衛星や地上システムの整備を進めているわけです。

)北海道全域ブラックアウト(2018年9月6日)の引き金になった苫東厚真火力発電所の近く。その送電線と鉄塔が背後に見える

内閣衛星情報センターが公表している情報収集衛星予算案を見てみます。

情報収集衛星に係る経費の平成29年度補正予算案及び平成30年度予算案」(平成29年12月、内閣官房)には、「平成29年度補正予算案の概要」として次の記述があります。

データ中継衛星地上システムの開発における受信用アンテナの作業工程等を見直し、試験を可能な限り早期に実施する。

このことですね。ここでは「受信用アンテナ」と書かれています。情報収集衛星(光学衛星またはレーダ衛星)が得た撮像データをいったんデータ中継衛星にアップリンクし、データ中継衛星から日本国内にある地球局に向けて再送信(ダウンリンク)する、という流れでしょう。そのデータを受信するためのアンテナの1つが苫小牧にある北受信管制局に置かれたと考えてほぼ間違いなさそうです。

また、同じ資料の「平成30年度予算案の概要」には次の記述があります。

平成31年度の運用開始に向け、第七期地上システムの構築を継続する。

平成31年度に運用開始のスケジュールになっているのは、光学7号機データ中継衛星です。「第七期地上システム」が何なのか分かりませんが、これまで無かった静止衛星に対応する地上システムの整備・運用が必要になることは間違いありません。

北受信管制局

)正面ゲート越しに見える新アンテナ。写真の右側がほぼ南の方向。赤道上空の静止衛星に向けるとアンテナ仰角はこれぐらい

)まだGoogleマップの写真では見えませんが、新アンテナ位置はこの辺り

)2つの”メロン”に収められているのは、低軌道の情報収集衛星との通信用アンテナ(「苫小牧と情報収集衛星(その3)」参照)。静止衛星との通信用らしい新アンテナの頂部が白く見える

今回は、苫小牧の内閣衛星情報センター北受信管制局にできた新しいアンテナについて考えてみました。

※ Googleマップ以外の写真は、2018年9月15日、やぶ悟空撮影

======== ここから 2018.10.27 追記 ========

先日搭乗した飛行機の窓から、新しいアンテナが遠くに見えました。

)新千歳空港から北に向かって離陸して右旋回で反転し、5000~6000フィートほどの高度から見た石油備蓄基地と北受信管制局

)同じく高度6000~7000フィートから

)ついでに、北受信管制局のすぐ南には、9/6地震で北海道全域停電の引き金となった苫東厚真石炭火力発電所が…

※ これらの写真3枚は、2018年10月18日、やぶ悟空撮影