神戸に管制部

航空局は「国内管制空域の抜本的再編」を行うようです。「空域の上下分離」により管制処理効率を上げ、管制容量の拡大を目指しています。その第一段階として、昨年秋の2018年10月に那覇ACCを廃止し、神戸ACCを発足させました。ACCとは、Area Control Centerの略で「航空交通管制部」のこと。単に「管制部」ともいう。)

現在の管制空域

世界中を飛行する航空機の交通整理(航空管制)は、地域ごとに各国が分担して受け持っています。そのうち、日本が担当する空域を「福岡FIR」といいます。FIRとは、Flight Information Regionの略で「飛行情報区」のこと。そう言われてもピンときませんが、航空機の安全で円滑な運航に責任を持つ空域と考えていいでしょう。何で「福岡」なの?という疑問も湧きますが、とりあえず今回はその説明はパスすることにします。

その「福岡FIR」、空域を次の図のように分け、4つのACC(航空交通管制部)と福岡にあるATMC(航空交通管理センター)の計5か所で航空路管制を行っています。(注:ATMCと福岡ACCは同じ場所にありますが、組織としては分かれています。)

)2018年10月に神戸ACCが発足するまでは、神戸ACCの空域を「那覇ACC」が担当していた。

この空域の下には多くの飛行場があり、飛行場の周辺には離着陸のための空域などがあります。それらの詳細については、ここでは省略することにします。

管制空域の再編

)現在(2018年10月から)の空域イメージ

航空局は、空域再編でどんな最終形態を描いているのでしょう? 資料などから読み取れるのは「上下分離」方式を取り入れることです。一般に「上下分離」というと、上部(運営)と下部(インフラ)を分けるイメージがありますが、空域に関しては言葉どおりの「高い高度」と「低い高度」です。空域を高度で上下に分けて管制を行う、ということです。そして、航空路管制を行う拠点を3か所(東京、神戸および福岡)に減らします。高高度空域を福岡が受け持ち、低高度空域は東西に分けて東京と神戸が担当する、という考え方が示されています。

  • 高高度空域および洋上空域 : ATMC(福岡)
  • 西日本低高度空域 : 神戸ACC
  • 東日本低高度空域 : 東京ACC

上下分割の高度は、どれぐらいを想定しているのでしょう? 資料にはまだ明記されていないものの、「上空約10キロ」などと報道されているところをみると、航空局は高度3万フィートあたりで区切るつもりのようです。また、低高度空域の東西をどこで区切るのかも示されていませんが、現状の東京ACCと福岡ACCの境界付近が東西の区切りとして残るような気がします。

)2025年4月以降の空域イメージ。各ACCの境界は、便宜上2019年時点の境界を単純に結合したものであり、最終決定されたものではない。

このようにシンプルにすることは、良さそうに思います。今後の航空交通量の増大が避けられない中、それにつれて管制官の人数を増やすことは困難ですから、航空管制業務を効率化する方策として上下分離が出てきたのでしょう。空域の「抜本的」再編とうたっていますが、この方法で増やせる管制容量は、現行の180万機から200万機(2025年)程度までの10%ほどらしく、抜本的というほど大きな拡大には感じられません。近い将来、さらなる「抜本的」な発想が求められることになるかもしれません。

移行期間

目指す2025年4月からの最終形態に至るまでの間に、3年の移行期間(2022年4月〜2025年3月)のようなものが設けられます。この間に、先に西日本が上下分離され、現行の福岡ACCと神戸ACCのエリアを併せた低高度空域を神戸ACCが受け持ち、同じエリアの高高度空域を福岡で管制します。東日本は現行どおり東京ACCと札幌ACCによる航空路管制が継続される見込みです。

)2022年4月〜2025年3月の空域イメージ。各ACCの境界は、便宜上2019年時点の境界を単純に結合したものであり、最終決定されたものではない。

広域ターミナル化

一方、飛行場周辺の管制も効率化が必要です。現行のターミナル空域を拡大・統合して「広域ターミナル化」を計り、北海道および沖縄周辺空域の広域ターミナル管制を「札幌」および「那覇」で行う計画のようです。ACCとしては廃止される(た)札幌と那覇ですが、その施設を広域化した「ターミナル・レーダー管制」に有効活用するという目論見のようです。札幌ACCでは、すでに「道東広域」や「東北広域」で広域進入管制を行っていますが、この空域をさらに拡大してターミナル・レーダー管制へと移行させ、運航効率を一層向上させるねらいでしょう。札幌や那覇以外でも広域ターミナル化が進められるようです。

具体的に何処と何処のターミナル空域を統合…という案が出てこないと予測は難しいので、航空局の図を引用させていただくことにします。

)航空局資料「国内空域の抜本的再編(ターミナル空域拡大・統合)」の一部を引用

トラブル発生!

神戸ACCは、2018年10月の発足当初から繰り返しトラブルに見舞われました。新たな管制システムである「統合管制情報処理システム」の一部に不具合が発生したため、10日には那覇空港などの出発便が制限されるなど、運航に多大な影響を及ぼすことになってしまいました。

管制情報処理システムは、これまでにも更新されるたびに多かれ少なかれ何らかのシステム障害を起こしています。ソフトウェアの不具合を完全に除去することは困難かもしれませんが、今回のトラブルでは「従来システムに切り戻す」という、技術者として大変に残念な状況に陥ったと言えるでしょう。およそ2か月に渡って対処した上で、12月5日から、ようやく神戸ACCでの管制業務を再開することができたようです。

飛行機を利用する側から見れば、管制空域がどのように再編されたとしても安全でスムーズに運航してくれれば構わないのですが、国が維持管理する管制システムの不具合のせいで私たちの旅程に悪影響が及ぶのはゴメンです。管制空域の抜本的再編だけでなく、航空管制システムの開発やシステム設計のあり方にこそ、抜本的な発想の転換が必要なンじゃないですか?

参考にした資料:

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※ 冒頭の写真は苫小牧市上空を飛行するボーイング747-400型政府専用機、2019年2月15日、やぶ悟空撮影

コメント

  1. アバター イカゴロ より:

    いつもの解りやすい解説をありがとうございます。AIP差替えのみの理解度では、那覇・札幌ACCの単なる廃止結果しか頭の残らないところでした。本職解説に感服です。

    • やぶ悟空 やぶ悟空 より:

      札幌ACCが無くなるのは少し先ですが、なんだか寂しいですね。広域ターミナルレーダー管制に使うとしても、人員は大幅に減となるでしょう。