三沢(7)、66年前のヘリコプター

東北電力が使っていたシコルスキーのヘリコプター「きたかみJA7014です。三沢シリーズの「トリ」として、この昔のヘリコプターに登場してもらうことにします。(写真は操縦席の計器類)

▲YS-11の前に置かれたヘリコプター「きたかみ」号。YS-11からユニコーンのように伸びているのは航研機の右主翼

機体は三沢航空科学館で大事に屋内保管されています。日当たり良好な位置です。
ヘリコプターの説明パネルには、

  • 型式:ウエストランド・シコルスキー式S-51-1型(通称:Dragonfly
  • 製造者:ウエストランド航空機株式会社(英国)
  • 製造番号:WH-H-91
  • 製造年月:1953(昭和28)年7月、輸入は同年10月

と書かれています。とりあえず「S-51」と呼ぶことにしましょう。

▲トンボの画像はこちらから

通称名の「Dragonfly」はトンボ、キャノピーがトンボの複眼のように見えます。前方のキャビンはアルミ製フレームだそうです。

▲トンボの画像はこちらから

トンボが空中停止(ホバリング)の名手であることから、Dragonflyとなったのかもしれません。プレキシガラス(Plexiglas)というアクリル樹脂は、透明で非常に強度が高いものです。

▲エンジン(右が機体前方)、パイロット1名と乗客3名は隔壁の右側に座る

空冷星型のアルビス・レオニデス(Alvis-Leonides521/1という、520馬力の9気筒ピストンエンジンが1基装備されています。透明な樹脂カバーがあるため細部がよく見えませんが、メインローターの回転軸に合わせてキャビンのど真ん中に配置されています。かなり重そう。この中央部はスチールフレームだそうです。(オリジナルはプラット・アンド・ホイットニー(P&W) R-985 Wasp Junior (450馬力)を搭載していましたが、民間用のMk.1Aでは変更されています)

このエンジンの回転方向はP&W R-985と反対なので、リバース・ギヤを加えているそうです。その手間をかけても450馬力から520馬力へのパワーアップを選んだのでしょう。

▲メインローター・ヘッドまわり

3枚ブレードで、全関節型メインローターです。70年以上前に初飛行したヘリコプターですが、現代のしくみと変わりません。なんか感動!

▲テールブームとテールローター

テールも3枚ブレードです。ブレードに書かれた製造年月日は「9-5-60」(1960年製)でした。テールブームはマグネシウム合金のモノコック構造だそうで、上部の背骨に当たる部分にテールローターを駆動するドライブシャフトが通っています。むき出しのワイヤーとプーリーが見えていますが、ピッチコントロール機構でしょうか。

▲テールローター・ヘッド

テールローター・ブレードのピッチ可変機構です。中央のピストン状のモノが左右に動くことにより、リンケージで3枚のブレードの迎え角が同時に変わります。赤青黄のペイントでブレードを識別できるようになっています。

▲サイクリック・スティックとコレクティブ・レバー

操縦も、計器も含めて今とほとんど変わらないようですね。S-51の特定のモデルは、世界で初めて計器飛行の承認を受けたヘリコプターなんだと。

▲飛行中に地上から見上げると「東北電力」と読める

このヘリコプターの型式は、さまざまな呼び方があるようです。

  • R-5(Rotary-wingの「R」か)
  • H-5(Helicopterの「H」か)
  • S-51(Sikorskyの「S」か)
  • WS-51(Westland Sikorskyの「WS」か)

などなど…。軍用ではさらに別の名前もあるそうで、分かりにくいなぁ。東北電力のJA7014は、英国のウエストランド・ヘリコプターがシコルスキーS-51の製造ライセンスを取得した後の1953年製なので、型式を「WS-51 Mk.1A」とした情報もあります。ウエストランドは159機製造して海外にも販売したそうです。製造番号が「WH-H-91」ってことは、91機目なのかな。

東北電力は、送電設備の建設や保守・点検のため、ヘリコプターを3機導入しましたが、2機を事故で失ったそうです。残ったこのJA7014は1967年に退役したので、13~14年間、働いたことになりますね。その後、ここ三沢航空科学館に落ち着いたのでしょう。

1956年からは川崎ベル47Gの導入を開始したそうで、以降も継続してヘリコプターが利用されています。以前、送電線に手が届く位置でホバリングしたヒューズ・ヘリのスキッドに座った作業員が、その状態のまま送電線の保守業務を行っている海外の映像を見たことがあります。そういうヘリ操縦にあこがれる私は、あまりにスゴ過ぎて感動した記憶があります。そこまでやらないにしても、ヘリコプターの特殊能力は電力会社のさまざまな業務に適していると思います。


苫小牧から三沢へは、八苫(苫⇒八)シルバーフェリーが便利でした。日に4往復もあるので早朝八戸着にすると一日を有効に使える感があります。当日夜の便で戻ることもできます。これなら三沢航空科学館にまた行って、さらにじっくり展示を観てみようかな。

参考資料:

※ トンボ以外の写真はすべて、2019年3月16日、やぶ悟空撮影