小さなクルマ

苫小牧市科学センターに入ると ベル204Bヘリコプターが見えてくるのですが、近寄ると左手に黄色いスゴく小さなクルマが展示してあることに気付きます。なにコレ、かわいいっ!

これは?

このクルマは「ダットサン ベビー」と紹介されています。「ダットサン」ってことは、日産自動車が作ったンですね。1965年5月5日、横浜にオープンした「こどもの国」に日産が100台を寄贈したのだそうです。つまり、子ども用なのですが本物の自動車です。市販はされませんでしたが、当時の交通法規に適合した本格的な造りになっています。日産自動車は、試作車を含めた車両105台に加え、走行コースや修理工場、こども自動車学校まで提供するという、かなり太っ腹な投資を行ったようです。今の「ニッサン」の状況からは想像すらできないハナシですが…。

▲説明パネル

日産のプレスリリースでは「日産が専用に設計・開発し、」とされていますが、読み進んでいくと「当時、愛知機械工業株式会社から市販されていた200cc・2人乗りのユーティリティトラック “コニー・グッピー” をベースに専用設計し、」とありました。日産は「グッピー」やその後の自動車の販売不振に陥っていた愛知機械工業と技術提携(後に業務提携)したのだそうです。

ま、そんなことはともかく、クルマを見てみましょう。

よく見ると…

▲外観。「この車は乗ることができません。」とある

このクルマには運転席側のドアが付いていませんが、当時の写真にはちゃんとドアがありました。ボディー外周にぐるりとラバー(プロテクター)が付けられています。デザイン上、不釣合いな小さいタイヤを目立たなくする工夫なのだそうです。

▲フロントマスク

日産のプレスリリースでは「ベビイ」ですが、展示では「ベビー

▲このスタイル! 

▲後ろのフード

鍵がかかっていなかったので開けてみました。

▲バッテリー

左側の奥に、端子が外されたバッテリーが見えます。この下にエンジンが配置されるミッドシップです。整備性は良くなさそう。

▲エンジン

エンジンや足回りを下から覗いて見ました。後輪を右後ろから(上・中)、そしてエンジンを右から(下)見た写真です。オレンジ色のカバーに覆われているのが、排気量 199 cc空冷2サイクル単気筒エンジンです。最高出力は 11 ps / 6,000 rpm。当時の軽自動車規格は360ccですから走りは推して知るべし。

▲排気

排気管が左右2本出ています。ン?単気筒なのに2本? 裏をのぞいたら、右はダミーでした。

▲前輪

足回りは、フロントにダブルウィッシュボーン、リアにトレーリングアームという四輪独立懸架です。設計した愛知機械工業は、コニー・グッピーというミニ軽トラに何んでこんな高度な機構を採用したンだろ?

アクセルペダルと大きなブレーキペダル。トルクコンバーターを採用してクラッチペダルはなく、T型レバーの前進1速・後進1速という潔いシンプルさです。

▲欠けている「DATSUN

このスピードメーターは当時の写真のものとは違っています。「km/h」だけでなく「MPH」もあるってことは、海外用のを流用したレストア?

▲チョーク

こんなところにチョークノブがありました。エンジンに近い場所です。若者ドライバーだと何に使うのか知らないかも。

日産サービスセンター株式会社 北海道支社(苫小牧市)が保有していた車両だったそうです。同社の協力で修復され、2012年から苫小牧市科学センターで展示されています。「こどもの国」が開園50周年を迎えた2015年には、保管されていた1台が日産社員有志により復元され、ニュースになっていました。

これらの記事・写真や50年以上前の当時の写真などを、苫小牧市科学センターの黄色いベビーと見比べると、いくつかの違いに気付きました。苫小牧のダットサンベビーは必ずしも当時の姿のままに復元されたわけではないようです。こちらの貴重画像を見ながら「まちがいさがし」をしてみては。

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▲曲線美

この美しいボディデザインを踏襲しながら、日産が得意の電気自動車として再び世に送り出すことができると、なんだかおもしろそうですね。

※ 写真はすべてスマホで、2019年6~7月、やぶ悟空撮影