北緯45度 を目指して

せっかく函岳まで行ったので、もう少し北まで足を伸ばしてみました。向かったのは、北緯45度、東経142度。北海道に10か所ある緯線と経線が交わる点の、まだ訪れていない最後のポイントです。これまでに接近した9か所については、こちらをご覧ください。

最北の ゼロ-ゼロ へ

目指すポイント「北緯450000秒、東経1420000秒」は、北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター 森林圏ステーションの天塩研究林の中にあります。場所は幌延町の問寒別(といかんべつ)地域、入林が制限されているのでどこまで近付けるか分かりませんが、地理院地図をたよりに進みます。

▲ 走行したGPS軌跡(地理院地図に加筆)

問寒別駅から北上します。目指すポイントの東170メートルにまで接近できる林道が通っているハズなのです。

舗装路はここまで。水源地の方に右折します。800メートルほど進んで分岐を右に入り、さらに数百メートル先に…

● ポイント1

やはり鎖が閉まっていました。近付けるのはここまでか…

● ポイント2

水源地に向かう道で、東経142度ちょうどになりました。南からの攻めをあきらめ、東に回りこみます。

● ポイント3

道道583号(道道785号)に「北緯45度通過点」の標識が出ていました。このときは「200m先」を見落としていて、それに気付かないまま Garmin GPSで「N 45°00′00.0″」を確認して何の疑問も持たずにいました。(なぜ 200mもずれているのか、読み進めると分かります)

● ポイント4

ここは、目指す北緯45度ポイントの北に位置する東経142度地点です。道道645号のつづら折り急カーブの途中です。

● ポイント5

西に回った道道645号にも「北緯45度通過点」の標識がありました。でも Garmin GPSの表示は「N 45°00′08.1″」。あれっ? おかしいな。

GPSが「N 45°00′00.0″」を示す地点を探して、300メートル以上先まで移動してきました。もしや、さっきの標識は Tokyo Datum(旧日本測地系)の表示じゃないの?

国土地理院が提供している経緯度変換プログラムTKY2JGD」で確認してみると、標識が立っている位置「N 45°00′08.1″」は、旧日本測地系では「N 45°00′00.0″」となりました。やっぱり、そうだったのか。以前に使われていた日本測地系で位置決めしたようです。

それにしても、測量法が改正されて「測量の基準」が日本測地系から世界測地系に変わったのは平成14(2002)年4月、今から17年も前のことです。それ以降、緯度・経度は世界測地系に基づいて表示することになっています。当時、航空の世界では、その数年も前からWGS84(世界測地系のひとつ)への移行で大騒ぎだった記憶があります。

ここの標識は サビや傷も目立たず、17年以上も経った古いものには見えません。日本測地系の時代に測量した位置のまま、標識だけを新しく付け替えたのでしょう。道道の管理者である北海道の担当者が気付かなかったのかなぁ。でも標識の設置工事を担当した業者なら、測量士もいて知らないはずはないでしょうに。

北緯45度、東経142度の目標ポイントへのアクセスはかなわず、東西南北の方向から その最寄り地点への接近に留まりましたが、まさかここで日本測地系に出会えるとは思ってもいませんでした。

北緯45度線のサイン

そのあと、幌延駅に向かう道道645号で、再び「北緯45度通過点」が現れました。

立派な看板とともに、道路上に北緯45度線と思われるラインが引いてあります。幌延町のマスコットキャラクター「ホロベー」と「ブルピー」が描かれていることから分かるように、看板はとても新しいものなのですが、もしや、ここも旧日本測地系Tokyo Datum)じゃないのかな?

Garmin GPSの表示は、案の定「N 45°00′08.0″」でした。やはり、今は使われていない旧日本測地系の時代に作った痕跡のようです。

▲ 道道645号の「北緯45度通過点」(Googleマップに加筆)

Googleマップでもこのとおり、「北緯45度通過点」と掲載されています。こりゃマズイんじゃないのかなぁ、誤解を増やす一方でしょ。Googleマップのクチコミを見ると、わざわざここを目指してやって来る人さえもいるようです。

もしやと思い、もう少し西側を走っている国道40号をGoogleマップで見てみました(そこまでは行かなかったので…)。北海道開発局の名前入りで大きな看板が立っていて、色褪せてはいますが「北緯45度通過点」と確かに書いてあります。その場所は…旧日本測地系の北緯45度線でした。開発局よ、お前もか。

この様子だと、他の場所にも日本測地系が残っていそうですね。Googleマップやストリートビューで北緯45度線を横に探していくと、いろいろ出てきました。さまざまなデザインのモニュメントなどを見ると、設置当時はチカラが入っていたのだろうと思います。でも、測量の基準が変わるという重大な変化があったわけですから、作りっぱなしではなく維持・管理にも責任を持ってチカラを入れてほしいですね。

北緯45度は日本で最北の「緯線」であり、45度は緯度を表すから90度のちょうど半分の値です。そんなことが、あちらこちらへの標識や看板、モニュメントなどの設置につながったのかもしれません。もしかすると北緯45度以外にも、また北海道以外にも、旧日本測地系をベースにした様々な 遺物 が残っていそうな気がします。

国も都道府県も市町村も、予算の制約が厳しいのはよく分かります。ですから、世界測地系の正しい位置に移設してくれとまでは言いませんが、せめて但し書きの小さな看板を付けるなりして「現在の北緯45度線はここじゃない」ことを明確にしておく必要はあるでしょう。今どきは誰もがスマホのGPSで容易に確認できますから、あれっ?と思う人もいるはずです。その疑問に答えなければなりません。子どもたちだって道を通るたびに目にしているンですから。

※ 特記のない写真は、2019年10月、やぶ悟空撮影

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コメント

  1. アバター イカゴロ より:

    さすがにGPS専門家だけあって貴重なる発見ですネ。最近は日本測地系という言葉も忘れていましたが、これからは興味深く道内の当該標識に注視したく思います。それにしても時期的に熊のリスクもある中、函岳からよく足をのばしましたネ。お疲れさまでした。

    • やぶ悟空 やぶ悟空 より:

      今年はめずらしく車でずいぶん走った気がします。北海道は広くてどこへ行くにも遠い! できるだけ数少ない公共交通機関を応援したいと思うのですが、経費と便利さから、つい車を選択してしまいます。でもこれからは高齢者事故のリスクも考慮しなければ…。