旭川VOR/DME、大雪を彩る

大雪山系が白くなった快晴の秋の日、近くを通りがかったので旭川空港に立ち寄りました。今回は 旭川VOR/DME に注目します。(写真は、滑走路西側から望む 旭川VOR/DME)

無線航行陸上局

旭川VOR/DMEの位置(Googleマップに加筆)

ターミナルビルの南側にあるグリーンポートという小高い丘に、飛行機を見に来ていた園児たちと入れ替わりに到着しました。ここからは逆光になりますが離着陸がよく見えます。振り返ると紅葉した木々の奥に、直径50メートルの 旭川VOR/DMEカウンターポイズが どんと居座っています。

▲ アンテナ拡大

まん中に立っているオレンジの棒はDMEアンテナで、たくさん並んでいるマッシュルームのようなのが ドップラーVORアンテナです。方位情報を送信するVORと、距離を測定するDMEを組み合わせてVOR/DME局を構成しており、電波法上は「無線航行陸上局」という無線局です。

VORアンテナと DMEアンテナ

ドップラーVORのアンテナは、中央の1個(DMEアンテナの下)のほかに直径13.5メートルの円周上に50個、配置されています。VORの電波は、中央のアンテナから基準位相信号が、円周上の50個から可変位相信号が送信されます。これらの位相差から方位を知ることができるのです。VORには アルフォード・ループ・アンテナ(Alford Loop Antenna)という水平偏波で無指向性のアンテナが使われています。

VORモニターアンテナ

VORから送信した電波を常時監視するための受信アンテナです。特殊な形状をしていますが、実は3素子のアンテナに鳥除けを被せただけです。長年にわたって工夫され進化してきた鳥除けは、かなり高価そうにも見えます。

▲ 高いところが好きな鳥たち

それでも鳥はやってきます。VORモニターアンテナの鳥除けの、中段にもてっぺんにも留まっていました。このくらい離れていてくれれば、受信レベルの変動はたぶん問題ないしょう。真ん中のDMEアンテナ頂部にも留まっていますが、こちらはほとんど影響ありません。

残骸

旭川VOR/DMEは平成30年度に更新工事が行われ、機器やアンテナ類が新しくなりました。以前はアンテナカバーが白色でしたが、監視カメラで雪の付着が分かりやすいよう全国的にオレンジ色へ変更されているようです。旭川空港では、紅葉とともに大雪山の白によく映えます。

更新工事で撤去されたVORDMEの機材が、敷地内に野ざらしのまま放置(屋外保管)されていました。たぶん、金属類の売り払い時期を待っているのでしょう。

▲ 撤去された機器の残骸とVORモニターアンテナ

駐車場の向こうに見える球体は周辺の航空機を捉える二次監視レーダー(SSR)アンテナで、こちらもあと1~2年で更新される模様です。というのも、仮設SSR設置に向けて準備が進められているようですから…。

▲ アルフォード・ループ・アンテナの残骸

取り外されたアンテナが大量に積まれていました。この写真では分かりにくいですが、めずらしい形状のアンテナなので少し調べてみましょう。FAAの資料から図を引用します。

▲ アルフォード・ループ・アンテナ(Modification of Standard Alford Loop Antenna for use on Doppler VOR, FEB 1961, FAA より。着色は筆者による)

上から見た図です。「」の字型に曲げられた金属板()を4個配置して対角同士を接続し、中央から給電します。黄色は固定するための絶縁体です。はアルミの円板で、このコンデンサを調整すると寄生電流を大幅に低減できるとFAAの報告書はまとめています。

この資料はかなり古いので、今では改良されたアルフォード・ループ・アンテナが用いられていることでしょう。

▲ アルフォード・ループ・アンテナ概略図

平面図だけではアンテナ形状が分かりにくいので、ざっくりと描いてみました。

VORモニターアンテナの残骸

同じ3素子アンテナですが、鳥除けが非常にシンプルです。コストは抑えられるものの、鳥除け効果は薄かった記憶があります。


」では、AIPの情報から 旭川VOR/DME を見てみます。つづく…。

コメント

  1. アバター イカゴロ より:

    函岳遠征での流れ記事とお見受けいたしました。身近なる旭川VOR/DME記事なので大変勉強になりました。専門家とは言え、一般的な航空図書や参考書には全く無い、解りやすい解説記事で関心いたしました。近年、全国のVOR/DMEも徐々に廃止となるようで淋しさ然りです。今年はAnt2に始まり、グリンポートへとやぶ悟空さんも何度も通われた気がしています。次回は、ぜひ函館VOR/DMEにも視点を当ててください。

    • やぶ悟空 やぶ悟空 より:

      VORやILSの「空間変調」ってやつが若いころ良く理解できず苦手でした。DMEやレーダーはパルスなので「1」「0」のデジタルのようなもの。まだマシだと思っていましたが、老いては「AI」とやらに付いて行けず、早くも難民の気配です。