B737の事故
トルコで、夜間に着陸したボーイング737型機が、滑走路を左に逸脱して崖から落ちたが、海に入る寸前で止まった、ということのようです。
よく売れている飛行機なので世界中を飛んでいますから、滑走路を逸脱したこと自体は特段めずらしいことではありません。驚いたのは機体が停止している状況です。よくぞここで止まってくれた!
(↑)トルコ北部トラブゾンの空港で、着陸直後に滑走路を外れて土手で停止したペガサス航空の旅客機(2018年1月14日撮影)。(c)AFP/DOGAN NEWS AGENCY
滑走路番号「29」が見えているので着陸滑走路は「11」ですね。滑走路29側の接地点標識付近から左に逸脱した痕跡が見えます。その付近は着陸帯の幅が狭いようで、滑走路幅の半分程度でしょう。この辺りに平行誘導路はなく、ターニングパッドが見えています。
こちらは産経ニュースから引用させていただきました。正面から見ると、海に落ちなかったのが不思議なくらいです。右エンジンは脱落して海上に見えています。右主翼と左エンジンで機体を止めたようにも見えます。それに加え、前脚と2本の主脚も役立っているかもしれません。
脱出シューターが1つ膨らんでいますが、この状況ではかえって危険だったかもしれません。滑りますからね。おそらく、扉を開けて自動的に膨らんだシューターを扉の位置から切り離した後、乗客を脱出させたのではないでしょうか。
(↑)トルコ北部トラブゾンの空港で、着陸直後に滑走路を外れて土手で停止したペガサス航空の旅客機(2018年1月14日撮影)。(c)AFP/DOGAN NEWS AGENCY
こちら側からの写真が現実的な角度を表しているように思います。他の2枚の写真ほど大げさには見えません。それでも十分急角度ですが…。
さすがに前方の扉は脱出に使用しなかったようですね。夜間で雨だったことを考えると、死傷者なく全員を脱出させることができたのは、お見事と言えそうです。
(↑)Trabzon Airportの滑走路は11/29で、長さ2,640メートル、幅45メートル、標高104フィート(32.80メートル)のようです。(Trabzon Airport website)
Aviation Heraldによれば、
- ペガサス航空PC-8622便(アンカラ発トラブゾン行)
- ボーイング737-800、機体記号:TC-CPF
- 乗客162名、運航乗務員2名、客室乗務員4名
- 着陸時刻:23時26分(UTC 20:26Z)
- 20:20Z時点の風:風向240°/風速01ノット、視程は4km、雨、もや…
などの情報がありました。
広島空港のアシアナ事故
トルコの事故のニュース写真を見たとき、3年ほど前に広島空港で発生したアシアナ航空A320機の事故を思い出しました。アンダーシュートして滑走路手前の無線施設に衝突し、着陸滑走中に滑走路を左に逸脱して崖の直前で停止した事故です。広島も雨の夜でした。
(↑)航空事故調査報告書より抜粋(部分)
写真では分かりにくいかもしれませんが、崖と池には大きな高低差があります。ここで止まらなかったら崖から落ちて大惨事になる可能性もありましたが、幸い軽傷者だけで済んだ事故でした。
今回の事故原因は、現時点では情報がなく、まったく予想もつきませんが、アシアナ事故(運航乗務員の規定不遵守など:航空事故調査報告書)とは違うことを祈ります。どんなにハードが進化しても、それを扱う人間がルールを守らなくては事故を減らすことはできません。いずれ、AIに委ねた方が安全?などと言われる世の中になってしまうのかもしれませんよ。
おまけ
ペガサス航空B737に続いて、アトラスグローバルのA321機が同じ滑走路に進入していたようです。
(↑)赤い飛行機がペガサス機、着陸直前の20時25分ごろ、高度375フィート。後続の黄色がアトラスグローバル機(Flightradar24)
(↑)25分間ほど上空で待機したが、ダイバートするアトラスグローバルのA321(Flightradar24)
もちろん、ゴーアラウンドしてトラブゾン空港には着陸せず、他の空港へダイバートしました。Flightradar24によれば、こんな深夜でも多くの航空機が飛んでいます。さすがヨーロッパですね。
※ 冒頭の写真は海上自衛隊呉史料館に展示の潜水艦、2015年10月30日、やぶ悟空撮影。でも、ペガサスは海に入ろうとしてはいけません。飛ばなきゃ。