コチラからの続き…
50年以上前に、北大の演習林で集材作業に使われたというフォードソンのトラクター。今は苫小牧研究林に展示されて静かな余生を送っています。カウンティCD50って、どんな重機なのでしょうか?
▲一見すると、普通のブルドーザー
▲傍に立つ看板
説明書きがありますが、このとおり、読む気にならない文字の薄れ具合です。でも目を凝らして地肌までよく観察すると、次のように書いてありそうです。
エンジン・フードの両サイドにこんな銘板が付いていました。ムツゴロウのようでもあり、カニのようでもあり、眼球に見えてカワイイ!
「FORDSON SUPER MAJOR」とあります。検索すると、大きな後輪の昔からよく見かける形の農業用トラクターが出てきます。目の前にあるブルドーザーとは、似ても似つかぬ外観です。この重機には、鼻先に「COUNTY CD50」(冒頭の写真)というネーム・プレートが付いています。「COUNTY」は、カウンティー・コマーシャル・カーズ(County Commercial Cars Ltd.)という、フォードのトラックやトラクターを改造する英国の会社で、1948年にはトラクターにクローラーを装着する改造を行うようになったそうです。
- クローラー(crawler)とは、無限軌道、履帯(りたい)のこと。キャタピラーとも言われるが、これは米国キャタピラー社の登録商標
▲クローラー
看板には昭和30年代の後半に導入…と書かれています。ベース車両であるフォードのスーパー・メジャーという4輪トラクターは、デフ・ロック付きで1960~1964年に製造されていたので時期は合いますね。カウンティ社は1980年代初期までさまざまな改造バリエーションを送り出したそうで、このCD50も人気モデルだったのかもしれません。
▲右側面
▲正面
▲左前面
▲上から見たブレード
前面のブレード(排土板:幅2.6m×高さ0.74m)は、左右に角度を持たせて取り付けることができるようになっています。これを「アングルドーザー」というンだね。
▲エンジン(右側から)
3,600ccの4サイクル水冷直列4気筒ディーゼルエンジン。作業時最大出力52PS、定格回転数1,600rpmで、前進5速と後進2速の変速ギヤで働きます。ついでに、
- 整備重量:5.9トン
- 最大牽引力:5.5トン
- 登坂能力:30°
という仕様です。
▲運転席
▲背面
作業中の危険から運転手を守るため、運転席は金属フレームと天井の金網で囲われています。幌の素材が残っているのはこの辺りだけ。
▲後部のウインチ
森林作業には必須の大きなウインチが付いています。ドラム径20cm、ドラム幅が30cmで、リバースギヤなし。
雨竜の演習林で集材作業に従事していたころの写真がありました。CD50の仕様と写真2枚の出典は、北海道大学農学部 演習林研究報告「重量の異なる2台のトラクターによる集材作業の功程及び経費に関する比較」(1967年11月)です。
丸太を何本も引っ張ったり積み上げたり…と、よく働いたようですね。たのもしいヤツです。
この研究報告では、「集材距離の短い場合には、2t級トラクターによる集材作業の方が5t級トラクターによる集材作業よりも、集材直接経費の点で有利であり得る」とまとめられています。2t級トラクターとは「三菱BD2型」、5t級トラクターが「カウンティーCD50型」です。この研究対象となった集材作業が行われたのは1965(昭和40)年7月ですから、CD50を昭和30年代後半に導入…という看板の記載どおりですね。
※ 特記のない写真はすべて、2019年5月、やぶ悟空撮影
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