台風19号が関東に接近していた10月12日、日本の空はスカスカに空いていました。この図は、15時(JST)の Flightradar24 の表示に、気象庁が発表した台風19号の位置と暴風域を書き加えたものです。関東から中部、関西付近まで、航空機がまったくといっていいほど見当たりません。
その前日11日の同じ15時では、こんな交通量でした。
▲ Flightradar24 による
比較すれば一目瞭然、いつもはすごい数の航空機が行き来しています。台風の進路や速度が高精度で予測できるようになった今では、リスクの大きいエリアと時間帯には飛ばさないという判断が当然でしょう。
でも、はじめの図をよく見ると、台風の暴風域の中を、それも台風の中心にかなり近い場所を飛んでいる飛行機がいました。
▲ Flightradar24 の表示を編集、加筆
Flightradar24 で見ると、キャセイパシフィックの香港発バンクーバー行き、CPA856便です。エアバスA350機が FL350で飛行しています。こんな傍にいて、ダイジョブか?
▲ 気象庁の高解像度降水ナウキャスト
気象レーダーでは CPA856付近の雲は薄そうですが、風はどうでしょう?
▲ 地表の風(earth : 地球の風 より)
地表はこんな様子で離着陸はムリ。CPAは FL350で飛行しているので上層風も見てみます。
▲ 250hPa の風(earth : 地球の風 より)
250hPa は 40,000フィート以上の高度となり、CPA856 の FL350より高い上層風です。このぐらいの高度だと、さすがに猛烈なジェットがあるようです。いくら対流圏の上層を飛行するとしても、旅客を乗せた定期便が台風のこんなに近くを飛行するとは…。いい度胸してますね。左側の席に座っていた乗客は、機内から台風の目を観察することができたンでしょうか。ちょっと羨ましい…。
台風を航空機で観測する米国のハリケーン・ハンターは、過去に台風に突っ込んで遭難した事例があるそうです。日本では、航空機による台風観測で台風の中に入ることは避け、高度4万フィート以上からゾンデを投下して観測するそうです。
ともかく、「ご安全に!」お願いしますよ。
- CPA : Cathay Pacific Airlines
- FL : Flight Level
- hPa : hectopascal
この台風19号により被害を被った皆さまには、心からお見舞い申し上げます。
コメント
40000ftになると台風の渦から生じる上昇気流渦が頭打ちになってジェット気流に流されて行くのがよくわかりますね
earthサイトで高度(hPa)を切り換えて風の動きを見ると、とても分かりやすいです。