アンテナドームの作り方

新千歳空港インター(IC)の近くに、こんな球状ドームがあります。レーダーアンテナを覆うレドームのようにも見えますが、入口には「PASCO」の表示と「World’s Leading Geospatial Group」という看板が出ています。レーダーじゃなさそうですが、いったい何のアンテナ? (Geospatial = 地理空間の)

パスコのアンテナ

▲ パスコ北海道地上局の位置(Googleマップ)

株式会社パスコ」の報道資料を見つけました。それによると、この施設は人工衛星との通信を行う地上局(※1)なのだそうです。パスコは、2007年から糸満市で沖縄地上局の運用を開始しており、ここ千歳市の北海道地上局は2局目で2011年から稼動しています。

※1 人工衛星と通信を行う地上側の局を電波法上は「地球局」といいますが、ここではパスコの表現に合わせて「地上局」としました。

▲ 北海道地上局(千歳市)の全景

1953年創業の「パシフィック航空測量」が成長して、30年後「パスコ」に社名変更したそうです(敷島製パンのPascoとは無関係)。「世界をリードする地理空間グループ」という看板のとおり、測量や地理空間情報を軸にした事業拡大の中に「衛星地上局ネットワークサービス」というのがありました。簡単に言えば、地球観測衛星が撮影した画像をパスコの北海道と沖縄の地上局で受信するという地上局運用サービスなどを提供しているようです。

地球観測衛星は、地球表面を高解像度で撮像するため低軌道を周回していますから、地上局1局の可視範囲に入る時間が少ないのです。そのため、世界中に多数の地上局を配置してネットワークを構成することが望ましいわけで、パスコの地上局はその一翼を担っているということでしょう。日本国内で南北に離れた地上局2局を設けることにより、同時被災から逃れ、気象等の悪条件を避けることができることに加え、低軌道衛星との通信時間を少し長く確保することが可能になります。

北海道局、沖縄局ともに、大きいドームには直径7.3メートルのアンテナが入っているとのこと。沖縄局には2013年にアンテナ1基(直径5.5m)が増設され、情報処理要員も増員されたそうです。最近気付いたのですが、千歳市にも2018年の秋には見当たらなかった2つ目の小さいドームができていました。中に収まるアンテナはたぶん小型で、周波数帯はXバンドぐらいでしょうか。北海道局もアンテナ2基体制になったということですね。(Googleマップの写真には まだ1基しか写っていませんが、小さいドームの基礎らしきものが見えていました)

ドームの作り方

▲ 小さいドーム(黄色の五角形を加筆)

多数の三角形で球状に組み上げられたアンテナドームが気になりました。どうやって設計するンだろ? 三角形の組み合わせから見える形は 主に六角形が目に付くのですが、中には五角形もあります。識別しやすいよう色を付けました。

三角形は外力にとても強く、歪みにくい形です。その三角形を組み合わせているのでトラス構造の一種といっていいでしょう。力をうまく分散させることができます。アンテナドームは、中のアンテナの動きを阻害しないよう、柱や梁のない広い球状の空間が必要です。一方で強風や積雪にも耐える強度が必要ですから、正多面体をベースに設計しているに違いありません。正多面体のうち、最大の面数を持つのは正20面体、つまり同じサイズの正三角形20枚を組み合わせてできる立体です。

▲ 正20面体からアンテナドーム(小)へ

立体なので表現しにくいのですが、アンテナドーム(小) ができる過程を想像し、図にしてみました。こんな手順なのかな。

  1. 正20面体の各3等分します。
  2. 点を結んで三角形を作ります。
  3. 残った六角形の中心にも点を付け加え、三角形を作ります。
  4. すべての点を頂点にして、中心からの距離が同じになるよう半径を延長します。
  5. これでアンテナドーム(小) と同じ骨組みになりました。

上の写真と一致しています。出入り口のアクセスパネル部分だけは、五角形のまま残してあるンですね。

▲ 小さいドームの頂部

てっぺんに避雷針と赤いランプが付いています。

20面以上の多面体では正三角形にはならず、いずれも二等辺三角形です。このドームは、たった2種類の二等辺三角形の組み合わせでできるようです。へえ~、なんか不思議。

大きいドームのハナシは、につづく…