すっかり冬本番の北海道、雪の少ない苫小牧ですが真冬日チラホラ。こんな季節は南の島にあこがれるナァ~。で、今回は沖縄の空の話題から。
(CG写真は「那覇空港滑走路増設事業に係る環境影響評価準備書のアウトライン」平成24年9月、内閣府沖縄総合事務局/国土交通省大阪航空局 より)
第2滑走路
那覇空港では滑走路増設の工事が進められていますが、年明け2020年3月26日、その新しい滑走路がオープンする予定です。(令和元年11月26日付、航空局プレスリリース)
▲ 那覇空港の滑走路増設(右が北)、(令和元年11月26日付、航空局プレスリリースから)
1本しかない現滑走路18/36(長さ3,000m×幅45m)と平行に、西側の海上を埋め立てて増設されたのは、長さ2,700m×幅60mの第2滑走路です。滑走路の長さは今より短いですが、幅が広くなりましたね。新しい滑走路とターミナルを結ぶ誘導路は平行で2本設けられ、渋滞を回避できそうです。ただ、現滑走路を横断しなければならないという不都合は残りますが、この段階ではやむを得ないでしょう。供用開始にあたって滑走路番号は、現在の滑走路が「18L/36R」に変わり、新滑走路が「18R/36L」となるはずです。
2本の滑走路の間隔が 1,310メートル確保されているので、同時離着陸が可能です。せっかく長い時間と巨額な費用をかけて造る新滑走路ですから、2本同時に使える配置にして管制処理容量を増やしておくことが望ましいでしょう。もっと狭い間隔の案もありましたが、環境への影響などを考慮しても最終的に1,310メートル間隔の案が採用されたようです。(出展:那覇空港滑走路増設事業における新規事業採択時評価について、航空局、平成25年1月)
▲ 那覇空港の新管制塔(令和元年11月26日付、航空局プレスリリースから)
滑走路が2本になるのに伴って、視認性を確保するため管制塔が移設されます。羽田の管制塔に次ぐ国内2番目の高さになるそうで、新しい管制塔の運用は滑走路オープンより2か月以上早い1月15日から。管制官も、場所と高さの変更による見え方の違いや管制機器に慣れる必要がありますから、いきなり平行滑走路運用を始める前に滑走路1本運用で業務を始めたほうが良いということでしょう。
▲ 管制塔の移設(令和元年11月26日付、航空局プレスリリースから)
空域
▲ 那覇空港、嘉手納飛行場および普天間飛行場の配置(AIPより)
嘉手納飛行場は極東最大の米空軍基地です。長さ約3,700メートルの2本の滑走路(05L/23R、05R/23L)を有し、うち1本は滑走路の幅が 90メートル以上もあります。半径5nmの管制圏があり、飛行場管制と着陸誘導管制(GCA)が行われています。
普天間飛行場(MCAS FUTENMA)は在日米軍海兵隊の基地で、滑走路06/24が1本(2,740メートル)あります。普天間飛行場の管制圏は特殊な形状をしており、飛行場管制と着陸誘導管制が行われています。
- AB : Air Base、空軍基地
- AIP : Aeronautical Information Publication、航空路誌
- ARP : Aerodrome Reference Point、飛行場標点
- GCA : Ground Controlled Approach、着陸誘導管制
- MCAS : Marine Corps Air Station、海兵隊飛行場
▲ 那覇空港、嘉手納飛行場および普天間飛行場(Googleマップに加筆)
これらの飛行場の位置関係と滑走路の向きは、航空管制上、とても厄介です。お互いの滑走路延長線が ほぼ最悪の状態で交差しているからです。
そこで執られている措置は、那覇空港の北から進入する、あるいは北に向かって離陸する航空機は、嘉手納飛行場の滑走路05への進入コースの下を 高度1,000フィートで通過させる、というものです。
高度差なので、断面図で見てみましょう。
▲ 嘉手納飛行場の滑走路05Lに着陸する進入方式の一つ(AIPより)
▲ 那覇空港の滑走路18に着陸する進入方式の一つ(AIPより)
嘉手納の滑走路05(L/R)への進入は一般的な3°パスで連続的に降下を続けることができます。下限高度が設定されているものの、上空には余裕があります。一方、那覇空港の滑走路18への進入は高度1,000フィートの水平飛行を5nm(約9km)継続しなければならず、この間は上にも下にも避けられません。
那覇空港の滑走路36から離陸した航空機もそのまま上昇を続けることはできず、高度1,000フィートを維持したまま数マイルを水平飛行しなければなりません。機体がオールノーマルならまだしも、何かが起きたときの余裕がない高度だろうと思います。
普天間飛行場の滑走路06への進入方式については AIPに記載がありません。オスプレイを含む回転翼機が多く、大型の固定翼機の発着は少ないのでしょう。那覇空港の管制圏が普天間のために一部削られており、普天間でもGCAが行われているので那覇空港の進入・出発経路を脅かすことがないよう誘導していると思います。
これら過密な3飛行場の滑走路配置では、米軍基地か否かにかかわらず、このような進入出発方式をとるのは止むを得ない措置なのでしょうが、高度1,000フィートに限定された上下の高度に自由度がない那覇空港サイドから見ると不公平感を拭えません。那覇空港の滑走路が2本になり同時離着陸が可能になっても、このような高度制限に大きな改善は望めないような気がします。
滑走路が増設されて沖縄の空の航空交通量が増加することに疑いはないでしょうから、より安全な飛行ができるような空域のしくみを創っていくことが重要なのでしょう。
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こちらの関連記事「那覇空港、1000から1200に」(2020年9月24日)も、どうぞ。
コメント
新管制塔の運用移行が
無事に新管制塔への運用移行が行われて何よりです。
今回は管制塔の他にターミナルレーダー管制室も新しい場所に移転になりました。
24時間運用のため、現/新TWR、現/新IFRと4箇所に人員を配置しての運用
移行となり大変だったようです。
そっかあ。4か所に配置するとは、大変でしたね。無事、移行できたなら良かったですね。CJさん、いつもありがとうございます。
すみません、上のほうは間違って送信してしまったようです。
疲れということで、お察し下さい(笑)
那覇は最初に「ARTS-F」が整備されましたが、「TAPS(処理系)」は
空港で一番最後の整備になりました。
これでCABの「ARTS」は全国から姿を消しました。