空の要衝、札幌VOR/DME

今回は 札幌VOR/DMESPE)のハナシ。VORDME のアンテナ位置が少しだけずれていることに気付きました。あれっ、いつから変わったの? (写真は 札幌VOR/DME

いまのSPE

AIPで 札幌VOR/DME を見ると、こんなふうに記載されています。

札幌VOR/DME(AIS Japan)

この情報によると、VORの送信アンテナ座標は次のとおりです。

  • 北緯43度10分28.71
  • 東経141度18分08.58

VOR送信アンテナは、半径13.5メートルの円周上に50個と中心に1個の計51個ありますので、座標の位置は円の中心です。

そして、DMEの送受信アンテナ座標は

  • 北緯43度10分29.08
  • 東経141度18分07.22

となっており、VOR送信アンテナ中心から西へ約33メートルずれている計算になります(国土地理院「測量計算サイト」の「距離と方位角の計算」による)。Googleマップの写真で見ると、このとおり。

札幌VOR/DME(Googleマップに加筆、上が真北)

▲ 北側から見た DMEアンテナ

左に見えるカウンターポイズから少しだけ離れた位置の、独立したマスト上に DMEアンテナが立っています。右端はVORのモニターアンテナ。

▲ 札幌DMEのアンテナ

オレンジ色が DMEアンテナ です。下の方にうっすら雪が付いています。

▲ センターから消えた DMEアンテナ

SPEのカウンターポイズは確か15メートルと高いので、地上からだとVORアンテナがよく見えません。元々はこの位置にDMEアンテナがありました。

以前のSPE

2008年に撮影された空中写真に、札幌VOR/DME が写っていました。

2008年の札幌VOR/DME(国土地理院 空中写真、2008年5月25日撮影)

この写真ではオフセットされたDMEアンテナは見当たりません。VORアンテナ群の中心にあるVOR基準信号アンテナカバーの上に DMEアンテナが設置されていたはずです。こんなふうに…。

VOR/DMEアンテナ(航空局webサイトより)

この撮影日時と局名は分かりませんが、真ん中に立つオレンジ色の棒がDMEアンテナです。(昔のD-VORは円周上に配置された白いアンテナカバー上面が平らでした。それだと雪が積もるので、こんなマッシュルーム形にして雪を落ちやすくしたのです。最近ではカバーをオレンジ色にして、監視カメラで雪の付着を見やすくしているようです)

札幌VOR/DMEも元々こんなアンテナだったのに、なぜ DMEアンテナの位置をずらしたのでしょうか? 航空局に問い合わせたところ、こんな回答をいただきました。

老朽化したDME装置の更新にあたって、電波を発射できない期間をできるだけ短くするため、新しいDMEアンテナを別の場所に設置し電波を発射できるようにした後、旧DMEアンテナを撤去した…と。

こういう理由で現在の状態になったんですね。札幌DMEの停波(運用休止)が長引いては困るということなのか。丘珠空港のエアラインや使用事業各社にとって、それだけ札幌VOR/DMEの重要性が高いと考えてよいのでしょう。それにしても、DME装置を更新したのなら通常は同じ時期にVOR装置も更新するはずです。今なら仮設VOR/DMEの設置で停波を解消するハズですが、用地の確保が難しいなど 何かの理由があったンでしょう。

札幌DMEアンテナの位置が変更されたのは6年前、20143月のことでした。

電波障害は?

札幌VOR/DMEカウンターポイズと 鉄塔&送電線

気になったのは、冒頭の写真でもお判りかと思いますが、札幌VOR/DME近傍の鉄塔と送電線です。最寄りの鉄塔までの距離は約240メートルと近く、写真で分かるように高さがカウンターポイズよりかなり高い金属構造物で、もちろん送電線も高い位置に張られています。直感的にはVOR/DMEの電波に悪影響が出るのでは?と心配になります。

背後に見える鉄塔と送電線は、2016年7月に撮影した私のスマホに写っていましたが、2015年7月撮影というネット写真では写っていません。2016年のGoogleマップに鉄塔の建設工事現場が写っていたので、2016年に建設されたものと思います。

▲ 送電線の経路(地理院地図に加筆)

鉄塔や送電線は、2018年9月に発生した胆振東部地震の翌月から試運転を始め 2019年2月から営業運転を開始した北海道電力(株)石狩湾新港発電所から連なってきているようです。

鉄塔出現前後の 札幌VOR/DME使用不可領域を比較する限り、大きな変更がないところをみると VOR/DME電波への影響はなかったのでしょう。もしや、DMEアンテナ位置の変更と関係があるのかと質問ついでに航空局に聞いてみましたが、「札幌VOR/DME近くに鉄塔、高圧送電線が設置されたことによる電波への影響はありません。」ときっぱり。お手数をおかけしました。

SPEは 要(かなめ)

▲ 丘珠空港から離陸した SAAB340B

小雪のちらつく中、函館行 HAC2749便が丘珠空港から離陸していきました。滑走路32から離陸すると、ほぼ延長線上に札幌VOR/DMEがあります。AIPで札幌飛行場(丘珠空港)のSID(標準計器出発方式)をみると、滑走路14/32のどちらから離陸しても、SPE上空を通るか、上空通過しない場合でもSPEの電波を使って飛行するルートになっています。

  • Sapporo Reversal Four Departure
  • Kuris Three Departure
  • Kuris Reversal Four Departure

着陸に際しても、もちろんSPEによる計器進入方式が設定されています。やはり、丘珠空港にとって札幌VOR/DMEはなくてはならない無線標識ですね。

  • VOR RWY14
  • VOR RWY32

▲ 航空路V2(地理院地図に加筆)

札幌VOR/DMEは 出発・進入用として使われるだけでなく、航空路V2(中標津~釧路~札幌~函館)を構成する無線施設としても位置付けられています。SPEの機器を更新する数か月間だけ仮設VOR/DMEに置き換えるとすると航空路の変更を伴うことにもなり、調整手続きに手間がかかり過ぎて現実的ではないのかもしれません。

10年後ぐらいに再びDME機器の更新時期が来れば、それに併せてDMEアンテナ位置が元に戻るのかな? あるいは、準天頂衛星などを使用する航法の進化により、北海道の空の要衝である 札幌VOR/DME も廃止されることになるのか…。後者の可能性が高そうですね。

使用した略語

  • AIP : Aeronautical Information Publication、航空路誌
  • AIS : Aeronautical Information Service、航空情報サービス
  • DME : Distance Measuring Equipment、距離測定装置
  • D-VOR : Doppler VOR、ドップラーVOR
  • HAC : Hokkaido Air System、北海道エアシステム
  • RWY : Runway、滑走路
  • SID : Standard Instrument Departure、標準計器出発方式
  • VOR : VHF Omnidirectional Radio Range、超短波全方向式無線標識施設

※ 特記のない写真はすべて、2020年1月下旬、やぶ悟空撮影

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