ATR、北海道を飛ぶ

北海道エアシステム(HAC)は、新たに導入した ATR 42-600による訓練飛行を続けています。Flightradar24で その航跡を追ってみました。

航空路

前回の「ATRがやってきた!」で触れたHACが就航している5路線の、実際に飛行する航空路を図にしてみました。

▲ HACの航空路(地理院地図に加筆)

「HACの」ってわけじゃないけど、HACが主に使っていると思われる航空路と直行経路です。赤線航空路(またはRNAV経路)、青線が直行経路です。VAは航空路の名前、数値は区間で最も高い最低経路高度(MEA、単位はフィートです。また、印が航空保安無線施設(三沢だけがTACANで他はVOR/DME)を、印がウェイポイントを示します。

基本的には、丘珠~函館、函館~奥尻 や 丘珠~釧路 の路線は直行する航空路ですが、三沢便は函館上空を通過し、利尻便は RUMOIYOROIのウェイポイントを通るなど少し遠回りの経路です。実際には、周辺トラフィックに応じた管制官のレーダー誘導(RADAR vector)により、これらのルートから外れる指示が出ることも多々あるでしょう。

千歳VOR/DME(CHE)と稚内VOR/DME(WKE)を結ぶ、距離163nmもの航空路V1MEAが最高で 9,000フィートなのに、距離がその半分しかない札幌VOR/DME(SPE)と函館VOR/DME(HWE)間のV2では いちばん高いMEA12,000フィートに設定されています。これは、SPEの南に標高3,360フィートの手稲山が、HWEの北に標高3,829フィートの横津岳がそびえ、山々がVOR/DME電波の低仰角部分を遮っているためと思います。

飛行航跡

ATR 42-600は、SAAB 340Bでは対応できなかった ADS-B Out アビオニクス(機上装置)を装備しているので、Flightradar24で飛行航跡を見ることができるようになりました。やっぱ「新車」って、いいナ。

航空路や直行経路と見比べながら、ATRの訓練飛行航跡を追ってみました。

▲ 丘珠~函館の往復(Flightradar24に加筆)

朝9時前に丘珠空港の滑走路14から離陸し、Sapporo-3 Departure で左旋回上昇して札幌VOR/DME(SPE)上空を通過後、Moiwa Transition で無駄に大きく海上まで出ましたが戻って航空路V2に載りました。FL160で函館VOR/DME(HWE)に向かい室蘭を過ぎて函館進入管制区に入ると、海上からレーダーベクターでしょう、恵山付近を通って函館空港の滑走路30に着陸しました。

その後、奥尻空港を往復したJA11HCは、丘珠空港へ向けて函館空港を離陸しました。HWESPEを結ぶ航空路V2FL150で巡航できる時間は短く、中間点付近から徐々に高度を下げていきます。SPE上空で左旋回し、丘珠空港の滑走路14への進入コースに載って着陸しました。

▲ 函館~奥尻の往復(Flightradar24に加筆)

丘珠から函館に到着したATRは、奥尻を往復しました。この日の風なら、函館空港の滑走路30から離陸してまっすぐ航空路V9で奥尻VOR/DME(ORE)に向かうので最短経路です。帰りは追い風なので、滑走路30へ回っても約20分で函館に戻りました。

▲ 丘珠~三沢の往復(Flightradar24に加筆)

ATRによる三沢への初飛行航跡です。丘珠を離陸したJA11HCは 航空路V2で函館VOR/DME(HWE)に直行した後、航空路V31で青森VOR/DME(MRE)に向かいました。その後は管制上の都合なのか八戸の南まで迂回させられながら、三沢空港の滑走路28におそらくILS進入で着陸しました。三沢にVOR/DMEはなく、三沢TACAN(MIS)が設置されているので、民間機はTACANのDME機能だけを使います。

帰路は三沢空港を離陸後、直行経路で JYONAポイントを経由してHWEに向かう最短経路で、丘珠までの所要時間はわずか45分ほどでした。

▲ 丘珠~利尻の往復(Flightradar24に加筆)

丘珠空港を午後に離陸したATR機は、直行経路を上昇し RUMOIポイントで航空路V1に合流して北上しました。飛行高度は FL150です。稚内VOR/DME(WKE)の手前24nmにある YOROIポイントから航空路A204で利尻VOR/DME(RSE)に向かいました。

利尻空港の離着陸では ADS-B信号を受信できないのでしょう、Flightradar24の航跡が消えてしまうようです。

帰路も同じA204YOROIポイント経由、航空路V1を南下しましたが、札幌ACCのレーダーベクターでしょう、海岸線をFL160で南下した後、浜益上空付近から丘珠空港の滑走路32に向けて誘導され着陸しました。

▲ 丘珠~釧路の往復(Flightradar24に加筆)

丘珠空港の滑走路14から離陸し、KURIS-3 Departure で航空路V2に合流してFL150で釧路VOR/DME(KSE)を目指しました。釧路空港には ILSで滑走路17に着陸したようです。滑走路17には、カテゴリーⅢB着陸も可能なILSが設置、運用されています。このフライトの所要時間はわずか30分少々でした。

帰路は、離陸後FL160V2をまっすぐ札幌VOR/DME(SPE)に向かいました。丘珠への進入ではS字にレーダーベクターされて滑走路32に着陸しました。

飛行監視ツール

新コロ(新型コロナウィルス)のこれ以上の感染拡大を抑制するため、北海道の鈴木知事は「緊急事態」を宣言しました。それを受けて外出自粛中の空好き高齢者にとって、Flightradar24 はいい友です。近ごろでは、札幌市消防局のヘリコプターや千歳海保のディーゼル・セスナ、航大帯広のシーラスなど、ADS-Bアビオニクス搭載の小型機が北海道の空をちょろちょろ飛んでいるのが見えるようになって、たまに発見すると時の経つのを忘れてしまいます。

これまでは HACのSAABがどんなふうに飛んでいるのか想像するだけでしたが、ATR 42-600新型機の訓練飛行航跡が見られるようになって、何か新鮮さを感じるところもありました。私がチェックし始めた2月21日以降は、23日と27日を除く2月の毎日、訓練飛行を行っていました。路線に就航する(4月12日の予定)まであと約1か月と少々、まずは新型機にしっかり慣熟していただくことが大事ですよね。いずれこの新型機に乗せてもらおうと思っています。まだ行ったことのない奥尻島を目指して、函館~奥尻便がいいかな…なんて夢見てます。

※ 写真はすべて、2020年2月に丘珠空港で、やぶ悟空撮影

ここで使用した略語など

  • ADS-B : Automatic Dependent Surveillance – Broadcast、放送型自動従属監視(今でもこのおかしな日本語が正式なのか不明ですが…)
  • ATR : Avions de Transport Régional – Groupement d’intérêt économique (G.I.E)
  • ATS : Air Traffic Services、航空交通業務
  • DME : Distance Measuring Equipment、距離測定装置
  • FL : Flight Level、フライトレベル
  • HAC : Hokkaido Air System Co., Ltd.、株式会社北海道エアシステム
  • ILS : Instrument Landing System、計器着陸用施設
  • MEA : Minimum En-route Altitude)、最低経路高度
  • nm : nautical mile、海里
  • RADAR : Radio Detection and Ranging、レーダー
  • RNAV : Area Navigation、広域航法
  • TACAN : UHF Tactical Air Navigation Aid、タカン、戦術航法装置(Wikipedia)
  • VOR : VHF Omnidirectional Radio Range)、超短波全方向式無線標識施設
  • VORTAC : VOR and TACAN combination、ボルタック

(出典:ICAO Abbreviations and Codes、航空法施行規則、管制業務処理規程、ほか)

コメント

  1. アバター イカゴロ より:

    やはり、丘珠に行っていたのですネ。ATRと言うと、どうしても過去の設計上の着氷事故のイメージがありますが、早く道民の足として根付いてもらいたいものです。奥尻に行く時には声をかけてください。お誘いをお待ちしています。

    • やぶ悟空 やぶ悟空 より:

      冬の丘珠フライトウォッチングは長靴でも大変ですが、ATRの発着に合わせて来ている人が私以外にもいらっしゃいました。早く春にな~れ。

  2. アバター RJCO より:

    JA01HC、昨日の夕方、函館から訓練飛行中にファイナル付近で落雷にあったようで…
    着陸後、急遽スポットであれこれ点検…
    その後の訓練飛行はキャンセルになり、今日も訓練飛行していませんね。
    軽微な損傷だといいのですが。

    その昔、自分はお客として乗っていたB767で、小松を離陸直後に落雷を経験しました。
    機体をハリセンでたたいたような乾いた「パーン!」という音と共に、機内に閃光が走りました。
    「機体に異常はないのでこのまま羽田に向かいます」とのことで、羽田には戻れましたが…
    到着後、整備の人達が機体を取り囲んであちこちあわただしくチェックしていたのですが、結局、折り返し便は機材変更になっていました。

    • やぶ悟空 やぶ悟空 より:

      昨日の雷で東区の一部が停電というニュースを見ました。ATRも落雷を受けてしまったんですね。通常は大丈夫なんですが、入口から出口までの電流の通路によってはリベットが飛んだり亀裂が生じたりする場合もあるので、かなり丁寧に点検しているのでしょう。JA11HC、大事がなければいいんですが…。RJCOさん、情報ありがとうございました。