グラフで見るHAC

道民の翼、北海道エアシステムHAC)の輸送量や運航状況って、どうなんでしょう。公式資料を探して、いくつかグラフ化してみました。(写真は HACSAAB 340B-WT

利用者数

まずは、HACを利用している人の数(HACが運んだ人数)が気になるので、そこから。

▲ 輸送人員(全5路線)

このグラフの基になるデータは、国土交通省東京航空局が公表している「東日本におけるコミューター航空旅客輸送実績速報」です。「奥尻」は函館~奥尻を、その他は丘珠と結ぶ路線を示しています。丘珠~女満別、函館~旭川の路線があった2012(平成24)年度以前は省略しました。2019(令和元)年度は上半期の数値しか見つけられなかったので、点線で倍増させています。

HACの全路線の輸送人数総計は、順調に増加しています。令和元年度には25万人を超えたのではないでしょうか。グラフをざっくり見ると、「丘珠~函館」路線が輸送人員の約半数(47~49%)を占め、次に多い「丘珠~釧路」路線がほぼ3割(28~33%)になっています。

▲ 輸送人員(函館、釧路)

もう少し細かく見るため、函館釧路だけを抜き出しました。圧倒的に函館路線が多いのには、便数の差も影響しているのでしょう。たとえば今月なら、函館は最大往復、釧路は最大往復です。両路線とも利用者は順調に増加しています。

2016年には、北海道に接近した台風が5個(気象庁)にもなり、それらの台風被害によりJR路線や幹線国道が長期間にわたって不通になりました。2016年度の伸び率が大きい(釧路 131%、函館 114%)のは、旅客が航空路線に流れたことによるものと考えられます。JR復旧後も減少することなくプラスの伸びを維持できているのは良かったですね。

▲ 輸送人員(利尻、三沢、奥尻)

残りの3路線も確認しましょう。上位2路線と比べると圧倒的に利用者が少ないので、縦軸をかなり拡大してあります。いずれも基本的には1往復/日ですが、丘珠~利尻路線が意外に多く、利用者数の伸びも大きいことが分かります。

2017年11月に路線廃止された函館~三沢は2013~2017年のデータに含めていませんが、年に千人以下なのでグラフで傾向を見る限りは影響ないでしょう。そのため単純に比較はできませんが、丘珠~三沢の路線も2018年から大きく伸び、2019年度もさらに増えて2万人超えの見込みです。

函館~奥尻の路線は年間1万人ほどで目立った変動もなく、HACとして最小の利用者数ですが、離島の貴重な生活路線となっているはずです。

利用率

「利用率は、旅客輸送数(有償/無償込み)を提供座席数で除して算出」と資料に注書きがあります。座席がどれくらい埋まっているか、が利用率ですね。10年ほど前、世界の年平均座席利用率は76%でしたが、今では80%を超えているのだそうです。同じ飛ばすなら空席は少ない方が利益が上がるのは当然です。

損益分岐点が HACではどのくらいに設定されているのかは分かりませんが、利用率をグラフにしてみました。

▲ 利用率

輸送人員と同じく、2019年度については上半期(4~9月)の値です。

「函館」と「利尻」路線が約7割以上を維持し増加し続けています。年平均で8割超えってすごいな! 「釧路」より「利尻」の利用率が高いンですね。その「釧路」路線は先に触れたとおり2016年の台風被害をきっかけに利用率もグッと上昇し、JRや国道が復旧した後も高利用率で推移しています。具体的な数値は、丘珠~函館69~83%、丘珠~利尻66~84%、丘珠~釧路55~79%となっています。

「三沢」は丘珠~三沢52~78%)だけを表しており、2017年11月に路線廃止された函館~三沢は入っていません。そして、函館~奥尻の路線はず~っと4割キープってところ。

SAAB 340Bから ATR 42-600への入れ替えにより提供座席数が増えると、利用率の数値としては一時的に減少する可能性がありそうです。でも、満席で搭乗できないということは減るし運航経費に大差がないとしたら、輸送人員が増える分、収益も増すでしょう。

就航率

「就航率」は、運航予定の便が実際にどのくらい運航したのかを示しており、数値が高いほど欠航が少ないことを表しています。たとえば旭川空港は4年連続で99%を達成しているそう。雪国なのにスゴイっ!

HACの就航率をグラフにしてみました。

▲ 就航率(年別、路線別)

2019年度については上半期(4~9月)の値です。冬季の下半期で就航率が低下することが予想されますので、2019年は見ないでおきましょう。

丘珠と函館、釧路、三沢を結ぶ路線では95%以上を維持しています。離島2路線(利尻、奥尻)が少し低めなのは、やはり冬期間の気象が影響しているような気がします。それを確かめるため、月別の就航率を見てみます。

webサイトに公表されている「運航状況」から、2年分(2016.4~2018.3)の「就航率」を月別グラフにしてみました。

▲ 就航率(月別)

全路線の総数で見ています。12月から急に落ち込みますが何とか90%台は確保し、春にかけて改善傾向になります。6月の小さな落ち込みは海霧やエゾ梅雨の影響でしょうか。データ入力が面倒なので2年分だけの傾向ですが、冬期間は就航率が低下する、と言えそうですね。

定時出発率

「定時出発率」は、その名のとおり、どれぐらい定時に出発できたかの割合です。「定時」とはいっても、時刻表ぴったりでなくても「15分以内に出発」すれば良いことになっています。航空局では「定時運航率」と称し、「全体の便数に占める出発予定時刻以降15分以内に出発した便数の割合」としています。

HACは全便をJAL便として運航しており、航空局の公表資料ではHAC単独の「定時運航率」データが見当たらなかったので、webサイトに公表されている「運航状況」から、2年分(2016.4~2018.3)の「定時出発率」を月別グラフにしてみました。

▲ 定時出発率(月別)

「就航率(月別)」と同じような傾向になりました。12月から冬季の落ち込みが見られますので、関連しそうな「気象による遅延」便数のグラフも重ねておきました。

定時(15分以内)に出発できなかった原因の多くは気象のせい、と言えそうです。その結果、後の便が影響を受けて「機材繰り」理由による遅延も増えてしまう、という流れでしょうか。

グラフから思ったこと

「北海道の翼」として中心に据えるのは、人口約197万(2020年2月現在)の札幌市、これは揺るぎありません。この大都市にある丘珠空港をコミューター輸送の起点として活用し、新千歳空港からの大手路線とあまり競合しないような道内や一部東北の地方都市へと航空路線のスポークを伸ばしています。

どれぐらいの需要が見込めそうなのか、行先都市の人口を確認してみました。

  • 函館市:約25万人(道内3位)
  • 釧路市:約17万人(道内5位)
  • 三沢市:約 4万人(八戸市:約23万人、県内2位)
  • 利尻島:約4,400人(利尻富士町 約2,400人、利尻町 約2,000人)
  • 奥尻島:約2,600人

(両島の人口は 2020年2月末現在)

人口が二桁ほど少ない離島路線では採算が取れるはずもなく、国、道、町からの補助を受けながら生活路線として維持されています。運航費の補助や離島住民割引に加え、航空機の購入にも補助があります。また、平成29年度からは「特定有人国境離島地域社会維持推進交付金」による運賃低廉化というのもあるようです。

三沢路線は、八戸市だけでなく十和田市(約6万人、県内4位)や周辺町村まで含めると40万人を超え、道南の渡島+桧山に匹敵する人口規模になりますから、上手くアピールできると大きな伸びが期待できそうな気がしています。JALに新千歳~青森の路線があるので、丘珠~三沢(八戸)を組み合わせて往復で異なる航空路線の観光プランもアリかな。1往復しかない丘珠便を補う手段として、苫小牧~八戸のフェリー航路を加えるのもおもしろそうです。

稼ぎ頭の函館釧路は、JRだと札幌駅から約4時間かかりますが HACなら丘珠から45分です。搭乗手続きなどの時間ロスを加えても実質所要時間は半分以下でしょう。特急列車で約1万円のところ、飛行機なら2倍までかからずに数時間を有効に使えます。出張なら宿泊の要・不要にも影響するでしょう。函館・釧路は新千歳からの大手航空路線もあるので、丘珠空港と新千歳空港へのアクセスも大事な要素です。

乗換案内などで札幌駅から検索すると、新千歳からの航空路線は上位に表示されるのですが、丘珠のHAC便はリストに載らないようです。でも、丘珠空港に近い地下鉄「栄町」駅からで検索すると HAC便がヒットするのです。私自身、札幌駅~丘珠空港間を公共交通機関でたまに利用しますが、乗り換えの手間と所要時間に難があることは間違いなく、丘珠空港アクセスの改善がHAC利用を促すための大きな要素になりそうです。

▲ HACの ATR 42-600

新型コロナウィルスによる航空輸送への悪影響は、全世界レベルで計り知れないほど拡大し続けている状況です。しかし、いずれ終息させることができた暁には、これまで以上の利用を促すため、コロナ減便による機材や人員、時間などの余裕を未来への準備期間として有効に活用していこうではありませんか。

※ 写真はいずれも、2020年2月、やぶ悟空撮影

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