7月もきょうまで。雨つづきでしたね。きのう西の方は梅雨明けとなりましたが、ことしも日本列島各地で多くの災害が発生しています。
北海道には梅雨がないと言われながらも、特に苫小牧では毎年この時期すっきりしない嫌な天気が続きます。雨にちなんで、アメダスといわれる地域気象観測所を訪れてみました。
胆振のアメダス
「地域気象観測システム」を「アメダス」といいます。Automated Meteorological Data Acquisition System の頭文字(AMeDAS)から付けた名で、直訳すると自動気象データ収集システム。「雨」にこじつけた「アメダス」は上手い名付けだと思います。
アメダスの観測所は全国に約1300か所もあるそうで、道内の227か所(2020/3/26現在の一覧より)を巡るのでさえも大変です。とりあえずは地元、道内人口第4位の苫小牧市がある胆振(いぶり)地方に絞って探してみました。胆振には気象観測所が14か所ありました。
▲ 胆振地方の気象観測所(気象庁webサイトの図に加筆)
滑走路の3分の1が苫小牧市に含まれる新千歳空港の位置を書き加えましたが、「新千歳航空測候所」は千歳市(石狩地方)にあるのでご注意ください。
観測所によって観測する項目が異なっているようです。胆振地方の観測所を管理するのは室蘭地方気象台です。これら14か所のうち「室蘭」と「苫小牧」はアメダスではありませんが、何回かに分けてすべてを紹介していくことにします。まずは胆振の西の端、豊浦町にある「大岸」からスタート。
アメダス大岸
▲ 大岸地域気象観測所(アメダス)
「おおきし」と読みます。道央自動車道の豊浦ICから国道37号を挟んで南側、豊浦町大岸郵便局の近くにありました。
▲ 四要素(アメダス大岸)
ここで観測しているのは、アメダス四要素といわれる降水量、気温、風、日照時間に加えて、積雪深もあります。
風は、主翼のないプロペラ機のような風車型風向風速計で測ります。プロペラは4枚と決まっているそうです。風が吹いてくる方向と風の速さを測ります。
日照計は、太陽が照らした時間を測ります。そのしくみは追って調べることにします。
空気の温度、気温は温度計で測ります。ファンが付いた通風筒の中に温度センサーが入っています。百葉箱の時代じゃないんだね。
データ変換装置というボックスには、○○計それぞれの信号を変換してデータ処理を行い、アメダスのセンターシステムへ送る機器が入っています。
▲ 雨量計(アメダス大岸)
降水量を測る「転倒ます型雨量計」です。写真では見えませんが、2つの「ます」に交互に雨水が貯まる構造になっており、一方のますに一定の量が貯まるとシーソーのように動いて(転倒して)ますが切り替わるので、動いた回数から降水量を測ります。受水口径は直径20cmと決まっています。雪も降水量になるので、寒冷地では雪を溶かすため不凍液とヒーターが入っている「温水式」などが使われるようです。周囲のリングは「助炭」という風の影響を低減するためのものらしい。
▲ 積雪計(アメダス大岸)
積もっている雪の地面からの高さを測ります。写真は超音波式の積雪計で、送受波器が高いところに下向きで付いています。超音波の反射時間から雪面までの距離を求めます。温度により音速補正もしているそうです。
(送受波器の地上高)-(送受波器から雪面までの距離)=(積雪の深さ)
アームの向きは、支柱による風の乱れの影響を小さくするために冬季の主風向と直角にしているとのこと。正常動作の確認は±2cm以内だそうで、正しく観測するのも大変です。
▲ アメダス大岸と地震計
アメダス大岸のすぐ脇に、地震計が設置されていました。気象庁の地震計ではなく、防災科学技術研究所の強震観測網のひとつ、豊浦強震観測施設です。GPSアンテナも立っていました。この地震観測網についても、いずれ記事にしたいので勉強中です。
もう一つ、反対側に小さな看板が見えるでしょうか?
▲ 一等水準点
国土地理院の水準点(準基351)がありました。ここは標高3.6113メートルだそうです。アメダス観測点だけでなく、いろんなものが集まっている豊浦町大岸でした。
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次は、アメダス洞爺湖温泉。「胆振のアメダスめぐり(2)」へつづく。
※ 写真はすべて、2020年5月、やぶ悟空撮影