那覇空港、1000から1200に

那覇空港の第2滑走路が今年2020年3月26日にオープンして半年になります。航空関係者にはよく知られる那覇空港の高度1,000フィート制限が、わずかですが緩和されて1,200フィートになっているようです。今回はそこに着目!(写真は2012年の辺野古)

隣接する3飛行場

沖縄本島の狭い地域に、3つの大きな飛行場が隣接しています。

  • 那覇空港(ROAH):平行滑走路2本(18L/36R、18R/36L)
  • 嘉手納飛行場(RODN):平行滑走路2本(05L/23R、05R/23L)
  • 普天間飛行場(ROTM):滑走路1本(06/24)

那覇空港と嘉手納飛行場との距離がおよそ12nm(22km)しかないのに、その間に普天間飛行場がはさまっている、という配置になっています。これも3密。

▲ 3つの飛行場の概略図(地理院地図Vectorに加筆)

普天間飛行場は米国海兵隊の航空基地で、ヘリコプター部隊を中心とした航空機が配備されています。飛行場への出入りは主に東側で、那覇空港や嘉手納飛行場を離着陸する航空機とは基本的に干渉しないコースです。普天間タワーの空域は狭く、特殊な形状になっています。この普天間飛行場の移転先として、ご存じのように名護市辺野古に新たな基地を建設中です。

那覇空港の高度制限に大きく関わるのは嘉手納飛行場です。南に向かって那覇空港の滑走路18に着陸する、または北に向かって滑走路36から離陸(あるいは復行)する航空機と、嘉手納飛行場の滑走路05に着陸する(または滑走路23から離陸する)航空機の飛行コースが交差するからです。

高度制限

例として、那覇空港の滑走路18R/Lに進入する航空機と、嘉手納飛行場の滑走路05R/Lに進入する軍用機を考えてみます。これらの進入コースが交差する場所は、那覇空港のすぐ北側です。

飛行機が着陸のため滑走路に進入するときの進入角は、通常は3°という浅い角度です。交差する付近は、嘉手納の滑走路05より那覇の滑走路18の方が距離が近いので、那覇空港に進入する飛行機の高度の方が低く、その上を嘉手納飛行場に進入する軍用機が飛行することになります。同じタイミングで重なった場合でも安全な高度間隔を確保するために、高度制限を設ける必要があるのです。

那覇空港の滑走路が1本だったころの、高度制限の一例を示します。

▲ 那覇空港・滑走路18・RNAV(GNSS)進入(2019年10月10日有効eAIPの図に加筆)

GPSなどの衛星航法システムを使って滑走路18に進入する方式です。「CAUTION: ALTITUDE RESTRICTIONS」(注意:高度制限)と枠付きで書かれています。

MIXER“と名付けられたフィックス(IF)から降下して、滑走路18の手前8nmの”SHURI“から同3nmの”AH854“までの5nm(約9km)区間は、高度1000フィートの水平飛行を維持しなければなりません。「1000」という数字の上下に引かれた線は、高度1000フィートから上にも下にも外れてはいけないことを意味しています。

那覇の滑走路18には計器着陸装置(ILS)が設置されていません。このような1000フィート制限があったため、ILSを設置しても有効活用できないからでしょう。

  • eAIP : electronic Aeronautical Information Publication
  • IF : Intermediate Fix
  • ILS : Instrument Landing System
  • GNSS : Global Navigation Satellite System
  • GPS : Global Positioning System
  • RNAV : Area Navigation

では、これと交差する嘉手納飛行場への進入方式はどうだったのでしょう?

▲ 嘉手納飛行場・滑走路05L・ILS進入(2018年11月8日有効eAIPの図に加筆)

嘉手納の滑走路05Lには、精密進入が可能なILSが設置されています。例として、滑走路05LへのILS進入を取り上げます。

初期進入フィックス(IAF)の”NUDUS“を高度6000フィートで、中間進入フィックス(IF)の”EBLIR“を3000フィートで通過します。進入角3.0°のGSにのって、滑走路05Lの手前5.8nmの”DUPIT“を2000フィートで通過して安定した降下進入を続けることができます。”EBLIR“と”DUPIT“の間で、那覇の滑走路18に進入する航空機より1000フィート以上高い高度を通過することになります。

  • GS : Glide Slope
  • IAF : Initial Approach Fix

高度1200フィートに

那覇空港の滑走路が2本になり、高度制限はどう変わったのでしょうか?

▲ 那覇空港・滑走路18L・RNAV(GNSS)進入(2020年3月26日有効eAIPの図に加筆)

新滑走路の供用開始日から有効となった、衛星航法システムを使う滑走路18Lへの進入方式です。

18Lの手前8nmの”RYCOM“(IF)から、同3.6nmの”KAMJI“(FAF)までの4.4nm(約8km)区間は、高度1200フィートを維持する方式に変わりました。”KAMJI“から3.0°パスで降下を開始します。

  • FAF : Final Approach Fix

▲ 嘉手納飛行場・滑走路05L・ILS進入(2020年6月18日有効eAIPの図に加筆)

嘉手納の滑走路05LへのILS進入方式です。”EBLIR“(3000ft)と”DUPIT“(2000ft)の間に、新たなフィックス”JIMMY“(2200ft)が設けられています。”JIMMY“を2200フィートで通過すると、那覇の滑走路18Lに進入する航空機より1000フィート以上高い高度を通過できます。

お互いの滑走路も進入角も変わっていないのに、何かマジックのような感じがします。フィックス位置とその高度設定の見直しによって、1000フィートだった高度制限を 1200フィートまで上げ、水平飛行区間距離を 9kmから 8kmに縮めることができたのですから…。

-+-+-+-

出発コースと ゴーアラウンドについては につづく。