北海道の気象レーダー 9、乙部岳

からのつづき。

乙部岳レーダに到着!

道南レーダ」ともいわれる「乙部岳レーダ雨雪量観測所」。航空局では「レーダー」と書きますが、同じ国土交通省でも北海道開発局は「レーダ」と長音を付けないようです。

▲ レーダ局舎入口の表示板

レーダサイトに到着したときは本格的な雨と濃霧で視界がきかず、残念ながら数枚のぼやけた写真しか撮れませんでした。

乙部岳レーダ雨雪量観測所

国土交通省のwebサイトによれば、乙部岳レーダ雨雪量計の位置は北緯42度02分23秒/東経140度16分27秒、地上高16.8メートル、アンテナの海抜高は1028.8メートルとなっています。乙部岳の標高が1016.9メートルですから、地形に遮られることなく360°観測できる位置取りです。

乙部岳レーダ局舎は、大小の円筒を重ねた形をしています。上にある大きな円筒の周りにはツノが何本も出ていて、ワイヤーが張られています。いったいこれは何だろう?

後日、webサイトから北海道開発局に質問してみました。その答えは…、積雪や着雪の軽減を目的として試行的に円筒形にしたそうです。ワイヤーは防雷装置で、乙部岳は他のレーダサイトより落雷被害が多いため試行的に設置しているそうです。日本海側の山頂では、上からだけでなく四方八方から、さらには下からも被雷するといいますから、これほどの雷対策になったんですね。一個人の質問に対して素早く24時間以内にご回答いただきました。ありがとうございます。

CバンドMPレーダ

乙部岳レーダは、Cバンドと言われる周波数 5GHz(ギガヘルツ)帯の気象レーダーです。2017年8月の国交省プレスリリースによれば、乙部岳レーダが CバンドMPレーダに高性能化されました。「MP」というのはマルチパラメータ(Multi Parameter)のことで、水平/垂直の二重偏波の電波で雨粒の形を高精度に観測できる気象レーダーです。

北海道では石狩北広島Xバンド9GHz帯)MPレーダがあり、それらと乙部岳CバンドMPレーダを組み合わせることにより、高精度・高分解能のリアルタイム雨量情報「XRAIN(エックスレイン)の配信エリアが拡大されることになったそうです。

  • XRAIN : eXtended RAdar Information Network、高性能レーダ雨量計ネットワーク

北海道開発局のCバンドレーダは、乙部岳(道南)の他に 函岳(道北)ピンネシリ(道央)霧裏山(道東)がありますが、機器の更新タイミングに合わせて順次MP化されるようです。今年2020年は「霧裏山レーダ雨雪量計設備製造 一式」を日本無線(株)が落札しました。納期は2021年3月となっていますから、今年度内にCバンドMPレーダ機器類やアンテナなどが製造され、おそらく次年度2021年のうちに道東の霧裏山(むりやま)で更新工事が行われるものと思います。

乙部岳レーダサイト(Googleマップ)

Googleマップの写真では、レーダ隣りの鉄塔にマイクロ波中継アンテナやヘリコプタ画像受信アンテナなどが見えます。マイクロ波で結ぶ多重無線回線は、北の八雲局と南の江差町伏木戸局を中継する道南線を構成しており、他に奥尻島と結ぶ回線もあるようです。(参考:北海道開発局の電気通信、平成27年3月)

雨が降っていなければ、これらのアンテナもじっくり観察できたのに…残念。でも、車でここまで来られただけでも十分ラッキーです。入口ゲートから砂利道区間12kmと姫待峠からの尾根すじ6km(専用道路)を合わせ、およそ18kmの道のりでした。道北の函岳レーダへのアクセスに比べれば短い距離ですが、私の軽にとっては決して容易ならぬ路面でした。

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アクセス路の下見だけのつもりだったのですが、乙部岳レーダサイトまで到達してしまった嬉しさで、すぐに山を下りるのはもったいない気がしていました。しかし、この雨では視界がきかず、ろくな写真も撮れないので、しぶしぶ下山することにします。

▲ 開閉器、専用道路わき

レーダや通信機器などに必要な電力は開発局独自の配電線路を敷設して確保しており、非常用発電機も設置されているそうです。雪による障害を低減するため、尾根を走る専用道路の沿線は電力ケーブルを地中に埋設しているそうですが、ところどころに写真のような区分開閉器が立っていました。

義経伝説

源義経に関する伝説は、北海道でも各地に残されています。乙部町の「姫川」や「姫待峠」の名もその一つと言えるでしょう。乙部町のwebサイトには、こんな言い伝えが掲載されています。

…乙部岳は義経の別名九郎半官から九郎岳、静御前を思いつつも越えなければならなかった峠は姫待峠と呼ばれています。また義経を追って乙部にたどり着いた静御前ですが、義経はすでに乙部岳を越え、2人は会うことが出来ませんでした。…<乙部町>

▲ 峠に倒れたままの標識「姫待峠」

また、乙部町内を流れる姫川の傍に立つ看板には、こんな説明が記されています。

…乙部に逃れていた九郎判官義経を追ってきた静御前は、ついに義経に会えず川に身を投じた、いつしかその川を姫川と呼ぶようになった。<北海道>

この日の姫待峠は、静御前の涙雨に煙っていました。

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これで、道内にある気象レーダー10か所(気象庁と北海道開発局)のうち、8か所を訪れたことになります。残すは ピンネシリ(道央)霧裏山(道東)の2か所です。体力やクマとの相談で、いつになることやら分かりませんが、出向く機会をうかがっておきます。

※ 特記のない写真は、2020年9月、やぶ悟空撮影