歌島高原の残骸

天気の良い9月のある日、日本海を望む島牧村の歌島高原を訪れました。そこで見た残骸とは…。


▲ 歌島高原の位置(OpenStreetMapに加筆)

歌島(うたしま)高原へは、国道から細い道を尾根に沿って上っていきます。舗装路から砂利道に変わり、また舗装されたと思ったら砂利道になり…、と幾度か繰り返しながら高度を上げていきます。標高150メートルほどで林を抜けると、いきなり青空とパノラマが広がりました。

▲ 歌島高原からの眺め

道南の最高峰、標高1520mの狩場山が島牧村の海岸線の向こうにそびえています。

高原の最高地点は標高364メートルですが、一番奥まで行ってみることにしました。

▲ NTT歌島無線中継所

車で通行できる道はここまで。開いたゲートの真っ赤に錆びた看板には、NTTのマークと「歌島無線中継所」の文字が微かに読み取れました。ここは島牧村の北限、鉄塔の向こうは「核のごみ」問題で近ごろ話題になっている寿都(すっつ)町です。

▲ 分解されたアンテナ

パラボラアンテナ1個が取り下ろされていました。冒頭の写真はアンテナホーン、二次反射鏡も見えます。ということは、カセグレンアンテナですね。

▲ 機器の収容架

150M-LE 11G」と表示がありました。日本電気(株)製の「中容量端局送受信装置」と書かれています。「150M」は概ね150Mbpsを、「11G」は11GHz帯の周波数を意味するようです。変調方式が16QAM(16値直交振幅変調)って…懐かしい無線の記憶がよみがえります。中継距離は25km程度。

取り外された機器は野ざらし状態で無造作に置かれていました。1998年5月製となっていましたから22年間ほど使われたようです。どうせ廃棄するだけなのでしょうが、元無線技術者としてはそこはかとない寂しさを感じる姿です。

▲ 収容カード

屋外に出されたばかりなのか、埃も目立たず雨にもあたっていないようです。「原歌(はらうた)」局とマイクロリンクで結ばれていたようですね。

▲ マイクロリンク(地理院地図に加筆)

原歌」局は、「歌島」中継所から直線距離で20kmの沿岸にあります。この辺りは「歌」の付く地名があるンだね。

▲ NTT歌島無線中継所(Googleマップ)

Googleマップで歌島局を見てみると、取り外される前のアンテナが写っていました。やはり原歌の方を向いています。今や光ケーブルが各地を網羅して家庭内までつなぐ時代ですから、マイクロ波の無線回線はバックアップとしても引退しつつあるのかもしれません。

▲ 歌島高原の最高点

上ってきた道の途中、標高364m付近には北海道開発局や他の無線施設が建っています。NTT歌島無線中継所の標高は350mほどなので私が立つ位置からは見えませんが、鉄塔上のパラボラアンテナは最高点の向こうに「原歌」を見通していたんですね。

きょう10月23日は電信電話記念日ということで、無線通信のおはなしでした。

ふと聞こえてきたターボプロップの音を追いかけると、海上保安庁千歳航空基地のボンバルディアDHC-8-300JA724A)が歌島高原を低空でかすめていきました。

※ 特記のない写真は、2020年9月、やぶ悟空撮影