飛行検査にヘリコプター?

航空局の飛行検査パイロットがヘリコプターの操縦訓練を受けているようです。固定翼機しか所有していない航空局の飛行検査センターで、なぜ回転翼機の訓練が必要なのでしょう?

契約情報から

国土交通省のwebサイトでは航空局の「調達・契約に係る情報」が公表されています。航空局発注の入札結果に、こんな訓練が載っていました。

  1. 飛行検査操縦士の自家用操縦士技能証明取得訓練(回転翼航空機)
  2. 飛行検査操縦士の定期訓練(回転翼航空機・模擬飛行装置)
  3. 飛行検査操縦士の事業用操縦士技能証明取得訓練(回転翼航空機)

落札日、落札金額(税込)および落札者は、それぞれ次のようになっていました。

  1. 20191126日、¥4,070,000-、つくば航空株式会社
  2. 20191225日、¥1,580,040-、エアバス・ヘリコプターズジャパン株式会社
  3. 2020617日、¥4,001,800-、つくば航空株式会社

まずは 1.で回転翼の自家用を取得させ、その後に 3.の事業用ライセンス取得へと進めているのでしょう。訓練を受けているのは、この落札額なら1名でしょうね。事業用ライセンスの取得は 3.の金額では無理でしょうから、次年度も続くと思います。

また、2.のシミュレーターによる定期訓練をエアバスヘリコプターが落札したところを見ると、飛行検査パイロットの中に回転翼(タービン)のライセンスを持っている人がいるのでしょう。

1年ほど前から、何やら準備が始まっているように見えます。

飛行検査機のチャーター

あれこれ検索していると、「PAPIの飛行検査をアルファーアビエィションが実施しました」という情報を見つけました。今年2020年8月の投稿です。飛行検査の外注?!

この飛行検査は簡易型PAPIA-PAPI)の検査で、アルファーアビエィションが所有する双発固定翼機DA42を使用して航空局の飛行検査官を乗せて行ったのだそうです。A-PAPI灯器が設置された滑走路脇では、地上の飛行検査官がセオドライトを覗いてDA42機の進入角からのずれを見ながら機内と無線で連絡を取り合っていたはずです。

  • A-PAPI : Abbreviated Precision Approach Path Indicator、簡易型進入角指示灯
  • セオドライト(theodolite): 角度を測定する精密光学機器

▲ 航空局の資料から抜粋

飛行検査のために航空機とパイロットを借り上げて運航を委託し、検査そのものは航空局の飛行検査官が行う、ということなのでしょう。手順に従って正確に飛行してもらえば、機上の電子機器がなくても検査ができるPAPIなど航空灯火の飛行検査なら可能なんでしょうね。

webサイトの写真から、その場所は佐渡空港であることが分かりました。滑走路28側のPAPIの角度は標準的な 3.0°ですが、滑走路10側は地形の影響により 4.5°と深い角度の進入になっています。滑走路の長さは890m。航空局の飛行検査機525C(Citation CJ4)の Landing Distance は 896m(Textron Aviation Inc.)なので、離着陸がほぼ不可能です(飛行検査機DHC-8-300はもっと長い滑走路が必要です)。そんな事情があったようですね。ちなみに、アルファーアビエィションが航空局の依頼で初めて飛行検査を実施したのは2011年、そのときも佐渡空港だったそうです。

飛行検査用ヘリコプター

調べてみると、ヘリコプター搭載用の飛行検査システムがあることが分かりました。その名も「HeliFIS」、Helicopter Flight Inspection System(ヘリコプター飛行検査システム)、このドイツ製のシステムを使った飛行検査が海外ではすでに行われているようなのです。

HeliFISを装備したAW109SPaerodataより)

ヘリコプターの特性に最適化された飛行プロシジャーなどの飛行検査を行うには、検査機もヘリコプターを使う方が良いのは明らかです。たとえば進入角ひとつをとっても、ICAO(国際民間航空機関)が推奨するHAPI(ヘリコプター進入角指示灯)の設置が国内でも進んでくると、進入角は最大12°という角度に設定される場合があるため、固定翼機で急角度の進入経路を検査することは困難です。

  • ICAO : International Civil Aviation Organization
  • HAPI : Helicopter Approach Path Indicator

単なる航空灯火の飛行検査だけなら民間ヘリコプターをチャーターすることも可能でしょうが、すでにヘリコプターでも衛星を使ったナビゲーションのGNSSが普及しつつあるため、ヘリ機内に飛行検査システムを搭載しなければ不可能なナビゲーション検査が出てくるでしょう。そんなわけで飛行検査センターは、近い将来に飛行検査機としてヘリコプターの導入を計画し、その準備を着々と進めているのかもしれない…と勝手な想像をめぐらせています。

  • GNSS : Global Navigation Satellite System

※ 「飛行検査にB737?」につづく。