夕張シューパロダムの反射板

10月の紅葉ドライブで見つけたダムのパラボラアンテナ反射板、その無線通信を探ってみました。ここは湛水面積で全国2位の夕張シューパロダムです。

2位と言われると気になってしまうのが1位。湛水(たんすい)面積1位は、圧倒的な大差をつけて雨竜第一ダム。朱鞠内湖のダムといえば道民には分かりやすいでしょう。湛水面積というのは、洪水時最高水位まで貯まった水面の面積のことらしい。

▲ 夕張シューパロダム

このダムは、大夕張ダムのわずか155メートル下流に新しく建設されたもの。2014年に完成しました。いまシューパロ湖には、その大夕張ダムが沈んでいるのです。総貯水容量は日本第4位の大きさ、と北海道開発局のwebサイトに載っていました。

写真右の赤枠部を、ダムの上から撮ったのが次の写真です。

▲ 夕張川ダム総合管理事務所と反射板

建物屋上のパラボラアンテナが向く先に、四角い大きな反射板があることに気付きました。

▲ 反射板

斜面の中腹に、16枚で構成される金属板が設置されています。反射方向を微調整するためのスクリューも見えました。この反射板を仮に「Ref-1」としましょう。

▲ ダム管理事務所屋上のパラバラアンテナ

背後の山は夕張岳(1667.7m)です。ダムは谷あいに造られるため、その管理所も周囲の見通しが効かない谷にある場合が多いようです。そんな場所との電波(マイクロ波)による通信回線を確保するため、反射板を用いることがあります。直進性が強い高周波の電波を反射させるだけなので反射板に電力は不要で、無給電中継装置などと言われます。

ダム管理所のパラボラアンテナで送受信される電波は、反射板で反射したあと、どこへ向かうのでしょうか?

▲ 夕張シューパロダムの下流

ふり返って、ダムの反対側を探してみます。

▲ もう一つの反射板

見つけました! 写真中央、夕張市南部地区の山裾に白い四角いものが見えます。

▲ 反射板「Ref-2」の拡大

こちらの反射板を「Ref-2」と名付けることにします。ダム近くにある「Ref-1」と同じく、16枚の金属板が並べられています。電波はここで再び反射されるようです。

このRef-2で反射した電波の行先は…、それはダムからは見えるはずがありません。ダムからの見通しがきかないので、2回も反射させているンですから。

見事な紅葉をまとう反射板Ref-2そばに向かおうと小川を渡りましたが、藪に阻まれ接近は諦めました。でも、Ref-2で反射した電波の行先は見つけました。

▲ 無線中継所

夕張川対岸の山頂付近に無線中継用の鉄塔を見つけました。これで、ダムのパラボラアンテナから2回の反射を経て山頂のパラボラアンテナまでのリンクがつながりました。地図に表すと、こうなります。

▲ 夕張シューパロダムのマイクロリンク(OpenStreetMapに加筆)

ダムから中継所のある山頂を直接見通すことができなくても、このように反射板を使えばリンクがつながるのです。マイクロ波が光のように直進する性質を上手く利用した通信回線設定です。

ダム管理所と反射板Ref-1は100メートルほどしか離れていません。Ref-1Ref-2はおよそ3kmの距離があります。そしてRef-2と山頂までが約4kmですから、電波の経路長は7km程度になります。

▲ マイクロリンク、高さの概念図

平面だけでなく、高低差でも見てみましょう。ダム管理所の標高はおよそ310メートル。地上高十数メートルの位置に設置されたパラボラアンテナは、標高350メートルほどの斜面に設置された反射板Ref-1を見上げています。Ref-1反射板は、夕張市南部地区山裾の標高220メートルほどの場所に設置された反射板Ref-2を見下ろしており、いったん上げられた電波を下ろしています。Ref-2からは標高750メートルほどの山頂にある中継所が見えていますから、そこへ送ってやればよいことになります。

ここで、ふと疑問が浮かびました。反射板Ref-1は無くてもいいんじゃないか、って。北海道開発局の資料によれば、ダムの高さ(天端標高)は306.6メートル。ダム管理所のパラボラアンテナの高さはおそらく標高320~330メートルでしょうから、ダムのパラボラを直接Ref-2に向ければリンクが確保できそうに思えるのです。最初に掲げたダムの写真を見ても、パラボラアンテナがダムより高い位置に見えているんですから…。

反射板を設置する場所の選定に関しては、用地の所有者、アクセスの容易さ、電波通路の樹木の管理などさまざまな要素が絡んでくるでしょうから、一概には決められないのでしょう。

さて、山頂までつながったリンクですが、その先はどうなるのでしょう? 山頂の中継鉄塔には、異なる方向を向いたパラボラアンテナが見えています。そのアンテナが向く先は、30kmほど離れた北長沼スキー場の上にある馬追山(まおいやま)無線中継所。そこで北海道開発局の全道統合通信網につながるのです。

今回は、反射板を使ったマイクロ波無線中継のハナシでした。

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ふと、回転翼の音で見上げると、夕張シューパロダム上空を北海道の消防防災ヘリコプター「はまなす2号」が西へと飛行していきました。

※ 写真はすべて、2020年10月、やぶ悟空撮影