胆振の電子基準点を巡る

半年前の写真から。2020年9月下旬、胆振地方にある10か所の電子基準点を巡るドライブに出かけました。コロナ禍の中、誰にも近付かなくて済むよう、お茶に缶コーヒーとおにぎりを持って出発!

電子基準点とは

「電子基準点」って、なんでしょう? ウィキペディアでは「測量における基準点、観測点の一つである」と、国土地理院のwebには「GNSS連続観測点です」とシンプルに説明されています。そのとおりなのでしょうが、とても用途が広く有用で、技術的にも高度なので私の言葉で正しく伝えられる自信がありません。そこで、この看板を読んでいただくことにしましょう。

▲ 電子基準点の説明パネル(壮瞥A局)

全国に1,240点(2009.4)と書かれていますが、いまwebでは全国約1,300か所となっています。そのうちの10か所が北海道胆振地方にあって、こんな看板が設置されていたのは「壮瞥A」地点だけ。この説明から全容を理解することは大変ですが、測量の三角点のようなものと思うことにして、とりあえず実物を見てまわります。

▲ 胆振の電子基準点マップ(国土地理院 電子基準点データ提供サービスのマップに加筆)

胆振西部の有珠山や洞爺湖周辺が密になっているのは、地殻変動を監視するためなのでしょう。一筆書きで最寄りの「苫小牧」を最後に訪れることにして、まず「白老」方面へ向かうことにします。

胆振の電子基準点

▲ 電子基準点「白老」と「登別」

1か所目の「白老(しらおい)」No.950139Aは、国道36号から白老駅に向かって道1本入った広場の角。まだ雲が晴れない朝です。駐車場やトイレもありました。「950139」は電子基準点番号とか局番号といわれ、上2桁は設置年度の西暦下2桁なのだそうです。白老には1995年に設置されたということ。末尾の「A」は何かな?

10か所まわるので、次の局にいそぎましょう。

2か所目の「登別(のぼりべつ)」No.970792Aは、幌別駅付近から国道をそれて幌別ダムに向かうと、ダム直下の道路脇にあります。公園があって広い駐車場が用意されています。これらの形状は「94型」というらしい。

▲ 電子基準点「室蘭」と「伊達」

3か所目は「室蘭(むろらん)」No.940018、白鳥大橋の北にある白鳥台5丁目の公園内です。鷲別岳すそ野の風力発電プロペラ群がよく見える場所でした。

4か所目の「伊達(だて)」No.960526のそばには市立図書館があります。ここは、だて歴史の杜総合公園の一角で、道の駅から歩いても5~6分でしょう。電子基準点の隣りには気象庁の計測震度観測施設が並んでいて、GPSの他に不思議なアンテナが立っていました。

▲ 電子基準点「虻田」と「洞爺」

これら2か所は洞爺湖町にあります。5か所目の「虻田(あぶた)」No.960525Aは虻田小学校グラウンド脇にあり、94型に太陽電池パネルが取り付けられていました。写真から外れた左の方には校舎のとんがり屋根に鐘が収まっていて、いい感じでした。

6か所目「洞爺(とうや)」No.950137Aは、洞爺中学校の道を挟んで反対側、洞爺ふれあいパークという公園のパークゴルフ場内に立っていました。とうやクリーナップセンターという下水終末処理場の隣りなので、かなり臭かった。

▲ 電子基準点「壮瞥A」と「大滝」

洞爺湖畔でおにぎりランチ休憩を取り、湖を時計回りに道の駅そうべつへ。その広場の角に立つのが7か所目、有珠山と昭和新山を望む「壮瞥(そうべつ)A」No.061150Aです。ピカピカの丸い付属標には、これまで巡ってきた局と違って「建設省」の文字がありません。「壮瞥A」が設置された2006年は中央省庁再編(2001年)の後ですから、国土地理院は国土交通省の機関になっていました。

そこから国道453で支笏湖へ向かう途中の左手に、8か所目の「大滝(おおたき)」No.950135Aがありました。大滝基幹集落センターという看板が立つ場所です。昔は大滝村でしたが、今は伊達市の飛び地、大滝区になっています。背後には、胆振の最高峰であるホロホロ山(1322.3m)が見えています。

この先は、次の「厚真」まで移動に1時間半ほど要します。途中の支笏湖に電子基準点「千歳」がありますが、そこは胆振ではなく石狩管内なのでパスします。

▲ 電子基準点「厚真」と「苫小牧」

厚真高校の隣り、あつまスタードームから少し南に下った場所が9か所目の「厚真(あつま)」No.950132Aです。訪れた日は、新しい機材を運んできたらしい、つくば「わ」ナンバーのトラックが止まっていました。ソーラーパネル付きの外筒をまとった新しい「02型」電子基準点が立っていました。近くに作業の方は見当たりません。午後3時半を回っていましたが、仕事の区切りのいいところで休憩中かも。トラックには他局のものらしい大きな木箱が積んであり、「様似」「厚真」「八戸」と書いてありました。順にまわっていくのでしょう。

最後の10か所目は、今朝のスタートに戻る「苫小牧(とまこまい)」No.950136Aです。緑ヶ丘公園展望台の登り口、周囲の山や木々より低い目立たないところに立っています。なんでここ? ほかに条件のいい場所がいくらでもあるでしょ、と以前から思っています。

▲ 順路(Googleマップ)

朝8時ごろ出発し夕方5時ごろ帰着という、まるで勤務時間のような日帰りドライブになりました。


10年ほども前になりますが、電子基準点のデータを利用させてもらったことが何度かありました。測量精度までは不要でしたが誤差数十センチ程度で位置を特定するため、あるマゼランGPSを使っていました。現場で記録したGPSデータを、国土地理院からダウンロードした最寄りの電子基準点データで後処理(post process)することにより、誤差の一部が除かれて精度が向上するのです。そんなきっかけで、電子基準点なるものの存在を知ったのでした。

今ではスマホや一般のGPS受信機で誰でも簡単に位置を知ることができますが、はたして精度はどうでしょう? 後処理しようにもほぼ対応不可です。私が使ったGPSは、ハンディとはいえ大きく重く、値段も高いうえ操作にも知識が必要で手間もかかるという厄介モノでしたが、たとえば精度50センチとか30センチという、ガーミンハンディ機では得られない結果を出してくれました。誤差1メートル以下というのは重要な条件だったのです。

国土地理院の電子基準点データ提供サービスへの登録は無料です。各局の緯度・経度・高度はもちろん、受信機名やアンテナ名なども知ることができます(知ってどうする?)。対応GPSを持っていなくても、地理好きや緯経度好きなら近所の電子基準点に興味を持てるかもしれません。

▲ 電子基準点の小さなアンテナ(室蘭局)

電子基準点のてっぺん(冒頭の写真)には、GPS衛星や他の航法衛星からの電波を受信するGNSSアンテナが取り付けられていますが、他にこんな小さなアンテナも脇の方に付いています。何のアンテナかな?と以前から思っていましたが、バックアップ回線用の携帯電話アンテナらしいのです。電子基準点で観測したデータは直ちに国土地理院に伝送されますが、その専用回線に不具合が生じた場合の代替手段として携帯電話回線が使われるようです。

  • GNSS : Global Navigation Satellite System
  • GPS : Global Positioning System

※ 写真はすべて、2020年9月、やぶ悟空撮影